あなたは「ストレスをなくしたい!」と思った事があるはずです。
しかしストレスをなくすことは残念ながら不可能です。
なぜならばストレスは生物が自然界で生き残るために身に付けたものだからです。
自然界には危険がいっぱいでした。天敵に遭遇したり環境が劇的に変化するようなことがあれば死に直結します。
僕たち人間の脳の深層には、そのころ身に付けた本能がいまだに残っています。
いわゆる生存本能というものです。
この生存本能こそストレスを感じる原因となっています。
いわばストレスとはあなたを守るボディーガードのような存在なんです!
とはいえストレスを不快に感じ続けていると、負の感情が生まれ、ホルモンバランスや神経伝達物質の分泌が乱れ、体に悪影響を及ぼします。
そこで今回は、ストレスを不快に感じなくなるきっかけになるお話をしたいと思います。
そのお話とは、「ストレスがどのようにして生まれるのか」というものです。
結論からお伝えすると、目の前の事柄を生命の危機だと誤って認識することで生まれます。
ストレスは脳の勘違いで生まれる
現代社会では天敵や環境の変化によって命に関わる危険性はかなり減っています。
そのことを顕在意識では理解していても、潜在意識では理解していません。
そのため自分にとって苦手な人と接っしたり職場が変わったりすると、天敵に遭遇したり災害に遭遇したときと同じような反応をしてしまいます。
大げさな言い方をすれば命が脅かされていると感じているわけです。
これがストレスの正体です。
実際はストレスを感じる対象によって直接的に命を奪われることはありません。
脳が大げさにとらえすぎているだけです。
しかしストレスを慢性的に感じると、ジワジワと心と体がむしばまれてしまい、心や体を病んでしまいます。
具体的にはうつ病などの心の病気やガン、高血圧、自律神経失調症、アレルギー、腰痛、肩こりなどの体の病気になってしまいます。
僕自身、ストレスが原因で腰痛になったり悪性腫瘍を患ったりした経験があります。
ストレスは生存本能
ストレスという言葉は、1936年に内分泌学者ハンス・セリエによって
『ストレスとは外部の刺激に対する体の反応である』と定義されました。
生まれながらにストレスとなる外部の刺激は高所と大きな音だと言われています。
高所や大きな音は命の危機に直結する可能性が高いためです。
成長とともに高所と大きな音以外にもストレスとなる要因は増えていきます。
ストレスが発生する仕組みを理解するためには、脳のつくりを理解する必要があります。
MacLeanが提唱した三位一体脳という考えがあります。
人間の脳を大きく爬虫類脳(反射脳)、哺乳類原脳(感情脳)、新哺乳類脳(理性脳)の3つに分けられ、それぞれが一体となって体や心に影響を及ぼすという考えです。
3つの脳に該当する脳は以下のとおりです。
- 爬虫類脳=脳幹(中脳、橋)・間脳
- 哺乳類原脳=大脳辺縁系
- 新哺乳類脳=大脳新皮質
人間の脳は長い生物進化の歴史を内蔵しており、相互作用しています。
爬虫類脳は生物的に最も古い部分で、生死に関わることに対し反射的に反応する役割を担っています。
恐怖となる対象と出会うと体がすくんでしまうのは爬虫類脳の影響です。
次に古いのが哺乳類原脳です。サルだったころの部分で、群れから外されたくない、マウンティングをとるといったことに影響します。
いじめや仲間外れ、競争の原因となるのは哺乳類原脳です。
最も新しい人間らしさに関する部分は新哺乳類脳です。自分の頭で考え理性的に発言や行動をする際に使う部分です。
分かりやすくするために
と言い換えて話を進めます。
トカゲ脳、サル脳は本能を司るのに対し、ヒト脳は理性を司ります。
トカゲ脳、サル脳が感じるストレスは生存本能なので消すことはできません。
ストレスが生存本能だということは、ストレスは生存に欠かせないということです。
言い換えればストレスはあなたを守ってくれる存在なのです。
とても大事なことなのでもう一度言います。
ストレスはあなたを守ってくれる存在、つまり味方なのです。
この考えが腑に落ちるよう、もう少しストレスが起こる仕組みについて詳しく説明していきます。
闘争・逃走反応
分かりやすく説明するために、襲われる際の反応を例にとって説明します。
ストレスのはじまりは、ストレスの原因となる情報を五感のいずれかでキャッチすることです。
襲われる例でいえば、敵の姿を視覚や聴覚でキャッチすることからはじまります。
五感から入った情報は脳の視床という部分を経由して大脳辺縁系の扁桃体に送られます。
大脳辺縁系はサル脳のことでしたね。
扁桃体は情報が自分にとって善か悪かを判断します。
扁桃体が悪と判断すると2つの反応が起こります。
①視床下部経由の反応
視床下部という部分からストレスホルモン(アドレナリン、コルチゾール)が分泌されます。
アドレナリンは交感神経を刺激し、心拍数や呼吸数を増やします。(心拍数や呼吸数を増やすことで全身に酸素を送ることができます。酸素は細胞がエネルギーを生み出すのに必要です。)
コルチゾールは動くために必要な糖を体内で産生します。
つまりストレスホルモンが分泌されることで、闘ったり逃げたりするのに必要なエネルギーを生み出すことができるわけです。
②脳幹経由の反応
脳幹はトカゲ脳のひとつです。脳幹はさらに中脳と橋(きょう)という部分に分けられます。中脳は体をすくめて身構えるような動きをするよう全身に指令を出します。橋はびっくりして体をのけぞるような動きをするよう全身に指令を出します。
つまり扁桃体が悪と判断すれば、すぐにでも闘うか逃げるかできる状態になります。
このような反応が命に関わる危機に起こるのであれば助かります。
しかし現代の日本において、そうそう命に関わる危機に直面することはありません。
それにも関わらず脳は自然界には存在しなかった様々なものを危機だと勘違いしてしまいます。
例えば仕事や苦手な人、お金の悩みなどです。
扁桃体がこれらのものを悪だと判断すると、視床下部・脳幹経由での反応が起こってしまいます。
実際は闘ったり逃げたりする必要がないのに、心拍数が増え(胸がドキドキ)呼吸数が増え(息がハアハア)全身の筋肉が緊張した状態になります。
あなたがストレスとなる人や物事に接した際はこのようなことが起こってるわけです。
ストレスが心身に与える影響
このような状態が頻繁に起こると、ドーピングをしているのと同じような状態になります。心臓や血管に過度な負担がかかったり、筋緊張が強まったり、血糖値が上がったり、免疫系に異常が生じたりして、様々な病気を引き起こしてしまいます。
例としては心筋梗塞、脳出血、腰痛、肩こり、糖尿病、腎臓病、アレルギー疾患、ガンなどです。
またストレス情報が視床を経由する際、視床から大脳皮質感覚野(ヒト脳の一部)にも情報が伝えられます。
そこで過去の経験や知識、記憶などに照らし合わせて情報に対して思考を巡らせます。その結果感情が生まれます。
感情がネガティブなものばかりになれば心を病んでうつ病などになってしまいます。
これがストレスを感じ、病気を引き起こす仕組みです。
まとめ:ストレスへの対処法
ここまで読んだあなたは、今まで漠然としていたストレスの正体を知ることができました。
まずストレスを敵ではなく味方だと認識を変えるところから始めてください。
ストレスはあなたを苦しめるためではなく、あなたを助けるために生じています。
これからはストレスを感じて胸がドキドキしたり呼吸が乱れたりしても
「アドレナリンが出てすぐにでも闘ったり逃げたりできるようにしてくれているんだな。ありがとう!でも大丈夫だよ。命に関わるような問題じゃないから。」
と自分の体と脳に話しかけてあげてください。
それだけでもストレスによる影響をかなり減らすことができます。
ストレスへの対処法に関しては他にもいろいろあるので、改めてまとめたいと思います。
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