梅毒とは
梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum subspecies pallidum)という細菌による感染症で、性行為によって感染する性感染症(性病)のひとつです。
皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入、その場所にデキモノができます。
さらに血液の流れによって梅毒トレポネーマが全身にばらまかれるため、体中に色々な症状が現れます。
梅毒には胎児のときに母親から感染する先天梅毒と、出産後に感染する後天梅毒があります。
生まれつきー先天梅毒
生まれてからー後天梅毒
また梅毒は症状の現れる顕性(けんせい)梅毒と無症状の無症候性梅毒に分類されます。
症状ありー顕性梅毒
症状なしー無症候性梅毒
さらに顕性梅毒は、症状によって第Ⅰ~Ⅳ期とステージがあります。
第Ⅰ期
感染後約3週間で梅毒トレポネーマの侵入した場所に小豆(あずき)くらいの大きさ~
人差し指の先ぐらいの大きさの硬いシコリが現れます。
これを初期硬結(しょきこうけつ)といいます。
初期硬結はだんだん硬く盛り上がってきて、やがて真ん中に潰瘍(かいよう)ができます。この状態を硬性下疳(こうせいげかん)といいます。<図1>

-検査・診断・治療の最新知見-
p.272-275より転用
通常は痛みなどの症状はありません。
初期硬結や硬性下疳が良くできる場所は
大小陰唇、子宮頚部
です。
2~3%と非常にまれですが、唇や指にできることもあります。
初期硬結や硬性下疳ができた後で、鼠径部(そけいぶ=太ももの付け根)のリンパ節が指先の大きさくらいに腫れてきます。痛みは特にありません。
第Ⅰ期の症状は2~3週間で一度消えます。
第Ⅱ期
第Ⅰ期の症状が消えてから3カ月ほどすると、全身の皮膚や粘膜に様々な発疹(ほっしん)が出たり、他の臓器に症状が出たりします。
他の臓器に症状が出るのは10%ほどです。発熱,食欲不振,悪心,および疲労といった自覚症状が出やすく、臓器としては
- 眼(ぶどう膜炎)
- 耳(耳炎)
- 骨(骨膜炎)
- 関節
- 髄膜
- 腎臓(糸球体炎)
- 肝臓(肝炎)
- 脾臓
などが侵されます。
これは血流によって全身に回った梅毒トレポネーマが悪さを始めるためです。
第Ⅱ期は80%以上で皮ふや粘膜の症状が現れます。3カ月から3年に渡って、以下で紹介するような症状が出たり消えたりを繰り返します。
その後無症候性梅毒になることが多いですが、再発を繰り返しながら第Ⅲ期、第Ⅳ期に移行していく場合もあります。
第Ⅱ期で見られる皮ふ粘膜症状は
- 梅毒性バラ疹
- 梅毒性乾癬
- 丘疹性梅毒疹
が頻繁に見られます。
他にも
- 扁平コンジローマ
- 梅毒性アンギーナ
- 梅毒性脱毛
- 膿疱性梅毒疹
などがあります。
それぞれについて詳しく解説します。
梅毒性バラ疹
体を中心に顔や手足にも見られる薄い赤色の斑点です。大きさは爪の大きさ程度です。第Ⅱ期になって最初に現れますが、症状がなく目立たないうえに数週間で消えるので、気付かれずに過ごしてしまうことが多いです。
丘疹性梅毒疹
感染後約12週間で現れます。小豆~エンドウ豆ぐらいの大きさの赤褐色から赤銅色のプクッとした発疹です。

梅毒性乾癬
手のひらや足の裏などに現れます。赤褐色から赤銅色で皮ふの表面が鱗(うろこ)のようにガサガサした状態になります。

扁平コンジローマ
陰部や肛門の周りにできる平べったいイボのことです。多くの人がたくさんできます。色は薄い赤色のものや白っぽい灰色のものがあります。梅毒トレポネーマがたくさん存在しているので、感染源になることが多いです。
梅毒性アンギーナ
扁桃腺を中心としてノドの粘膜がただれて炎症を起こします。アンギーナとは急性扁桃炎のことです。
梅毒性脱毛
全体に髪の毛が抜けるタイプと、円形状にあちこち虫食いのように抜けるタイプがあります。
膿疱性梅毒疹
丘疹性梅毒疹の発疹に膿(うみ)が溜まった状態です。免疫力が低下している際に見られます。
第Ⅲ期
感染後3年以上経過すると、皮ふの下にゴムのような弾力のデキモノが触れるようになります。
最近では第Ⅲ期に移行することはほとんどありません。
第Ⅳ期
全身に広がった梅毒トレポネーマの影響で、
- 大動脈炎
- 大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)
- 脊髄癆(せきずいろう)
になります。
心臓から全身に血液を送る大動脈に炎症を起こす病気です。心血管系に問題が起こります。
大動脈の壁が一部飛び出して瘤(こぶ)のようになった状態で、大きくなると破裂する危険性があります。破裂すると命に関わります。
手足の動きや感覚に関係する神経の集まりである脊髄に穴が開いてしまう病気です。マヒの原因になります。
第Ⅳ期の症状も現在ではほとんど見ることがありません。
さいごに
梅毒は長年に渡って全身に症状が現れ、進行すれば命に関わる可能性もあります。
まずはコンドームを使用することでの予防が大切です。
今回紹介したような症状が出たら早めに受診を検討しましょう。
皮ふの症状であれば皮膚科、男性の陰部に症状が出たら泌尿器科、女性の陰部に症状が出たら婦人科を受診しましょう。
受診せずに自分で結果を知りたい場合は、自宅でできる検査を活用しましょう。

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亀頭や包皮