エイズの予防【医師解説】

エイズとは

エイズとはacquired immunodeficiency syndrome=後天性免疫不全症候群の頭文字をとった AIDSが語源です。

ヒト免疫不全ウイルスhuman immunodeficiency virus;HIV)が感染し、全身の免疫が機能しなくなった状態をエイズといいます。

全身の免疫が機能しなくなると、普通ではかからない感染症悪性腫瘍を引き起こします。

近年では治療薬の開発が飛躍的に進んだため、初期に発見し適切な治療を受ければ、免疫力を落とすことなく普通の生活を送ることが可能となってきています。

しかし初期は無症状であったり、重い症状がほとんどないため、HIVに感染したことに気付かないことも多いです。

その結果、パートナーを感染させてしまったり、初期に適切な治療を行うことができずエイズを発病してしまうことが多いです。

日本では毎年1500人前後のHIV感染者/AIDS患者が発生しています。

世界では年間180万人の新たに感染し、100万人がエイズによってお亡くなりになっています。

治療が進歩したとはいえ、いまだに深刻な感染症です。

そこで重要になってくるのが予防です。

こんな方にオススメの記事です

HIVに感染するのを予防したい

どのようにしてHIVに感染するのか知りたい

この記事を読めば、HIV感染を予防し、エイズになる危険性を減らせます

※結論だけ知りたい方は、最後の【まとめ】だけをお読みください。

HIVに感染する原因

HIV自体は弱いウイルスなので、普通の環境下では生存できません。

そのため咳やくしゃみなどで感染する空気感染や、ウイルスが付着して感染する接触感染は起こりません。日常生活だけで感染することはありません。

感染するのは血液や体液が混ざり合った時のみです。

具体的には以下のとおりです。

  1. 性行為
  2. 輸血や移植
  3. 一度使用した注射針の刺入
  4. 母子感染(出産前や分娩中に母親の血液を介するか、出産後に母乳を通じて感染)

原因を知ることで予防法が分かります。

HIVは全身の体液中に存在しますが、感染の原因となるのは血液、精液、腟分泌液、母乳です。涙、尿、唾液(だえき)の中にも少量存在しますが、これらの体液から感染することはほとんどありません。

HIVは触ったり、抱き合ったり、食事を一緒にしたり、軽いキスをしたりする程度では感染することはありません。せきやくしゃみ、蚊に介してなどによる感染は報告されていません。

HIVの感染予防

性行為

性行為によって体液の交換が行われることでHIV感染を起こします。

オーラルセックスやアナルセックスでも、体液の交換が起こるので感染を起こします。

体液の交換が起こらないようにすることで予防できます。

具体的には以下のことを徹底してください。

  1. コンドームを正しく装着する
  2. 不特定多数の人との性行為を行わない
  3. できれば検査を行って陰性であることを確認する
  4. 他の性病を治療する
  5. 予防薬を内服する

①コンドームを正しく装着する

コンドームを正しく装着することで、体液の交換を減らすことができます。

しかしコンドームの正しい装着だけでは完全に予防することはできません。

正しく装着しても途中で外れてしまう可能性はありますし、コンドームに元々穴が開いていたり途中で破ける可能性があります。

オーラルセックスやアナルセックスでもコンドームを使用する必要があります。

最初から最後までコンドームを着用することで、はじめてHIV感染を予防できます。

前戯にも注意が必要です。陰部と口が接触することでも体液の交換が起こります。

確率は低いとはいえ、感染する可能性があります。

性行為が終わった後も、体液が傷や粘膜に入ることで感染する可能性があります。

最後まで気を抜かず慎重に予防しましょう。

②不特定多数の人との性行為を行わない

性行為を行う相手が増えれば増えるほど、当然感染する可能性は増えます。

相手が多くの人と性行為を行っていれば、さらに確率は高くなります。

品行方正な一人の方だけをパートナーにしていれば、感染する可能性はありません。

とはいえパートナーが本当に品行方正であるかは確かめようがありません。

感染予防には気を配っておくのが良いでしょう。

③できれば検査を行って陰性であることを確認する

性行為を行う際はお互いに検査を行い、感染していないことを確認するのが理想です。

性病の検査を行うことに対して、いまだにネガティブなイメージがあるようです。

これは間違ったイメージです。

性行為を行ううえでの最低限のマナーとして、性病検査を定期的に受けるべきです。

検査を受けることで、あなた自身はもちろんのこと、パートナーを守ることにつながります。

医療機関を受診するのに抵抗があるならば、自宅で簡単にできる検査キットもあります。

匿名で行えますし、郵送するだけで結果が出ます。

紳士淑女のたしなみとして、検査を受けましょう!

自宅で簡単にできるHIV検査はこちら

④他の性病を治療する

他の性病によって皮膚に傷がついていると、感染する危険性が高くなります。

性病そのものによる問題もあるので、性病を疑う変化があれば検査を受けるようにしましょう。

性病について詳しくはこちら↓

これらの性病検査も自宅で簡単に行うことができます。

⑤予防薬を内服する

HIV感染を薬で予防する方法があります。

この予防法をプレプ=PrEP(Pre-Exposure Prophylaxis)といいます。日本語にすると暴露前予防となります。

パートナーがHIV陽性のときに毎日1日1錠抗HIV薬を内服するという方法で、2015年9月にWHOから出されたHIV治療に関するガイドラインでも推奨されています。

しかし対策の遅れている日本では保険適応になっていないため、希望する場合は自費で購入しなければなりません。

輸血や移植

輸血に使われる血液は献血されたものです。献血された血液は輸血に用いて問題がないか検査されます。

しかしどんな検査も100%確実ではありません。

検査の網をかいくぐってHIVが混入した血液が輸血され、HIVに感染してしまったケースが日本でもあります。

2003年までに4名が輸血によってHIV感染したことが確認されました。その後献血時のチェックや検査が強化され、しばらく輸血によるHIV感染者は出ませんでした。

しかし2013年に新たに1名が輸血によってHIV感染したことが分かりました。

その後もさらにチェックや検査が強化され、輸血によってHIV感染する可能性は200万回に1回未満となっいますが、可能性は0ではありません。

移植の場合は一人ずつかなり慎重に検査が行われるため、ほとんど感染することはありません。

しかし輸血と同様、検査で陰性だから100%大丈夫とは言えず、可能性は0ではありません。

特にHIV検査をきちんと行わずに腎臓、肝臓、心臓、膵臓、骨、皮膚などがHIV検査が移植されると、感染する可能性が高いです。

一度使用した注射針の刺入

医療現場でHIV感染している人の採血や注射などを行った際、使用した針が医療従事者に刺さってしまうことがあります。

その際、HIVが体内に侵入して感染を起こしてしまいます。

また麻薬や覚せい剤などを使用する際に、HIV感染者が使用した針を使用することでも感染を起こします。

母子感染

HIV感染した人が妊娠・出産した場合、以下のルートで赤ちゃんに感染が起こります。

  • 妊娠期間中、胎盤を通じて胎児に母親の血液が流れて感染
  • 分娩の際、産道を通過するときに感染
  • 出生後、赤ちゃんが母乳を飲んで感染

感染した母親が治療を受けていない場合、出生時約25~35%が感染します。

また授乳によって10~15%の赤ちゃんが感染します。

母子感染を予防するには

  • 母親が治療を受ける
  • 母乳を与えず人工乳を与える

ことが重要です。

母親が治療を受ける

母親がHIV治療薬で治療を行うことで、赤ちゃんが感染する危険性を下げることができます。

さらに帝王切開で出産し、赤ちゃんにも治療を行うことで、感染の危険性を大幅に下げることができます。

母乳を与えず人工乳を与える

人工乳を使用することで母乳による感染は0にできます。

まとめ

  • HIV感染を予防することでエイズの発病を防げます。
  • HIV感染する主な原因は、性行為輸血や移植一度使用した注射針の刺入母子感染です。
  • 輸血や移植に伴う感染は、医療側に努力によってほぼなくなっています
  • 性行為に伴う感染の予防は、一人一人の予防意識が重要です。
  • 母子感染による感染は、母子に対する治療帝王切開人工乳の使用で予防できます。