ホリスティック医学【医師解説】

ホリスティック医学とは

ホリスティックとはwhole(全体)holly(神聖)を合わせた意味をもちます。病気を病んだ臓器として見なすのではなく、体全体をみること、さらに心、魂も含めて全体を癒すことを目指します。

心、魂の結果が体をつくっており、病の原因も心、魂にあると考えます。昔はシャーマンによる祈りによって心と魂を癒すことで体を治療していました。

19世紀までは医学においてもホリスティックな思想は一般的でした。ところが近代医学が発展するなかで、医療は体を治すことばかりに重点をおき、科学的に不確定な心と魂は切り離して考えるようになりました。

心はカウンセラーや心理学者に、魂は宗教やスピリチュアルの指導者にゆだねてしまいました。

ばらばらになってしまった体、心、魂を統合し三位一体で治療するのがホリスティック医学の考えです。

近代医学はホリスティックを失っている

近代医学が専門・細分化により発展したことで多大なる貢献をしていることは否定できませんが、その功罪として病んだ臓器のみを見て、全体を見ない医者が増えてしまいました。

脳出血の後遺症で左半身麻痺が残った患者さんから聞いた話です。

ある大学病院の脳外科の教授の診察を受けた際、後遺症について質問したところ、

出血は止まっているから脳外科的には治癒している、よって後遺症は自分とは無関係な話だ

と言われたそうです。

患者さんを全体として見ればこのような発言はできないはずです。

麻痺がある体は治ったとは言えませんし、心も魂も救われていません。たとえ回復の見込みが少ないとしても心と魂に働きかけ、体全体を少しでも治癒に向けるのが医者の務めだと僕は思います。

他にも心臓の術後の傷がいつまでも痛んで苦しんでいるのに、手術は成功したからと全く相手にしてもらえないことを涙ながらに話す患者さんによく遭遇します。

病気さえ治せば患者さんが苦しんでもいいのかと怒鳴りつけたくなります。

悲しいことに、このような全体を見ずに病んだ臓器のみを見る医者が非常に多いのが現状です。

西洋医学とホリスティック医学の違い

西洋医学とホリスティック医学の治療の違いを説明するのに分かりやすい例がストレス性の胃潰瘍に対する治療です。

西洋医学ではこれらの症状の原因になっているストレスには目を向けず、臓器を治すことに主眼をおき、薬で胃酸の分泌を抑えて治療します。

一方ホリスティック医学であれば、ストレスの原因となっている問題(仕事のストレスであったり、人間関係のトラブルであったりします)に目をむけ、心と魂を癒すことで治療を行います。

ホリスティック医学的な治療の方が、時間も手間もかかりますが、根本的な治療となりますし、完治させることができ、再発することもありません。

最近西洋医学でもホリスティック医学的な考えが取り入れられてきました。

たとえば腰痛では検査によって原因がはっきりしないものが大多数であり、その多くが社会的背景や心理的要素が絡んでいることがわかってきました。

整形外科医のみならず精神科医やカウンセラー、ソーシャルワーカーなどが連携して治療に取り組む試みが始まっています。

心の治療で大切なのは、否定的な考えをなくし、生きてやりたいことをイメージし、愛する人たちのことを考え、リラックスし安楽になることで治癒のプロセスを発動させることです。

ホリスティック医学の治療法

ホリスティック医学の治療は原則として治療のプロセスに患者本人を参加させます。

今の状態は思考と行動の結果であり、どんな過去を生き、今をどのように生き、将来をどうとらえているかの結果です。

患者本人の心の奥深くに眠る記憶を、夢や瞑想によって引き出すことで治癒のプロセスを発動させることができます。心と魂が生きようと生命力を発揮することで、免疫細胞が活性化しどんな病気も克服することができます。

ホリスティック医学では確立された治療であればさまざまな治療法を統合します。

通常の投薬や手術に加え、マッサージや瞑想、視覚化、心理学、カイロプラクティック、ケイシー療法(後の章で説明します)などの代替医療も取り入れます。

食事療法や運動療法も重視しています。

食事療法は新鮮な果物と野菜中心の食事で体を浄化させ、動物性タンパク質を魚、鶏肉から摂取し力をつけ、太陽の光と新鮮な空気をたっぷり取り込むことをすすめています。

病院で手の施しようがない状態になった末期の多くの方々が、ホリスティック医学によって西洋医学的には説明できないような回復をみせています。西洋医学では無視されている心や魂に働きかけることで、本来誰にでも備わっている、体を正常に維持する力を呼び覚ますのです。

その力を、ホリスティック医学の母グラディス・テイラー・マクギャレイ博士は「内なるドクター」と表現しています。

内なるドクターとは、潜在意識に宿る治癒するための知恵、能力のことだと思います。

私たちの遺伝子には、生命が誕生してから40数億年、様々な環境に適応するため進化し、先祖代々多くの危機を乗り越えてきた情報が刻まれています。

遺伝子はどうすれば治癒するかを知っており、潜在意識にその知恵は眠っています。その言葉を引きだし能力を発揮すればどのような病気でも治癒することが可能です。

博士は余命など誰にも分からないことなのだから、希望を奪ってしまう余命宣告はすべきではないと言っています。僕もこの考えには同意します。

医者の仕事は内なるドクターを呼び覚まし、治癒のきっかけを作ることです。治りたいと思う明確な理由を見つけ、生きる動機になるゴールを設定することで内なるドクターにコンタクトできます。

治癒する人たちには将来に向けて生きがいとなる目標を持っているという共通点があります。生きがいや目標をみつけられるよう導くことが医者の役割です。