リスクと成功のバランス

はじめに

何事もリスクを覚悟して挑戦しないことには成功は望めません。

分かりやすい例えで言えば、自転車を補助輪なしで乗れるようになるための練習です。

転ぶリスクを恐れて練習を避けていては、いつまでたっても乗れるようにはなりません。

転ぶことを承知のうえでペダルをこぎだすことで、成功に近付くのです。

何度転んで傷だらけになっても、諦めず繰り返すことで、やがて乗れるようになります。

幼児期には成功のためにリスクをとって目標を達成することができていました。

しかし大人になると、子供の時にできていたことが、できなくなっています。

子供時代よりも後退してしまっているともいえます。

それが大人になることだと自己弁護するのは簡単ですが、逃げ口上にしか聞こえません。

確かに成長過程で多くの失敗をすることで、リスク回避を学ぶことは重要です。

しかしリスク回避ばかりに偏重してしまい、挑戦することを恐れている大人があまりにも多いと感じます。

果たして挑戦することを恐れている大人が成功者になれるでしょうか?

子供から見てカッコいいと憧れるでしょうか?

決してそんなことはありません。

いつの時代でも挑戦の先に成功はありますし、挑戦している人は輝いています。

ただしリスクがあまりにも高いことに対し無鉄砲に挑戦する人は、愚者です。

リスクと挑戦のバランスが重要になってきます。

今回は成功するためにどのようにリスクをとっていくべきなのかについて考察してみたいと思います。

リスクへの恐れを減らす方法

僕がリスクと成功に関して最も多く学んだのは医療現場です。

医学部で6年間医学教育を受けますが、そのほとんどは知識を学ぶための教育です。

法律上、医学生は医療行為を行うことが禁止されています。

そのため国家試験に合格し医師免許を取得した時点では、点滴すらできません。

医師となってからあらゆる医療行為を学んでいきます。

事務的な仕事であれば間違っても修正が可能ですが、人の体に対して行う医療行為に間違いは許されません。間違いが命に直結します。

僕の場合は整形外科医だったのでブロック注射や関節注射などに加え、手術の技術を習得する必要がありました。

手術の方法は、本や動画などで学ぶことはできます。

しかし技術を身に付けるには、実際に手術を行うしかありません。

泳ぎを覚えるのに、本や動画でいくら学んでも、泳げるようにならないのと一緒です。

とはいえ手術に練習はありません。いきなり本番です。

ここでリスクを恐れ過ぎてしまうと、いつまでたっても執刀することができず、医師として成功することはありません。

リスクを恐れず一歩踏み出す勇気が必要です。

そのためには日ごろからしっかりと準備しておくことが重要です。

準備に大切なのは知識イメージトレーニングです。

知識

知識は本や動画で学びます。先述したように本や動画だけで技術が身に付かないとは確かです。しかし知識がないのとあるのとでは雲泥の差です。知識を得ることで確実にリスクを減らすことができます。その結果リスクに対する恐れは減ります。

イメージトレーニング

本や動画で知識を学んだら、イメージトレーニングを繰り返し行います。

自分の頭の中で、手順を何度も繰り返します。つまずく所があれば、本や動画に戻って学び直します。繰り返すなかで徐々に詳細までイメージしていくようにします。実際自分がやっているつもりでイメージします。

イメージトレーニングを繰り返し行うことで、本や知識で学ぶ以上の学習効果が得られます。その結果、さらにリスクに対する恐れが減ります。

イメージトレーニングに関する面白い実験結果があります。

オーストラリアの心理学者アラン・リチャードソンが行った実験です。実験は以下の通りです。

集められた人をランダムに次の3つのグループに分けました。

  1. バスケットボールのフリースローを20日間毎日練習をする
  2. 1日目の2日目だけフリースローの練習をする
  3. 1日目と20日目だけフリースローの練習をしたが、そのあいだの期間は毎日20分間自分がフリースローをしている場面のみをイメージする

20日目に各グループの上達度を調べたところ、①は成功率が24%上昇、②は不変、③は23%上昇しました。

つまり毎日練習した人と、ほとんどイメージトレーニングだけしかしなかった人で、上達率にほとんど差がなかったのです。

これほどまでにイメージトレーニングは効果的です。

経験者にフォローしてもらう

実際はいくらイメージトレーニングをしていても、イメージ通りにいかないものです。

変数が多いものほどイメージから逸脱します。

人の体はその最たるものです。

体の構造はひとりひとり異なりますし、状態も刻一刻と変化します。いくらイメージしていても、イメージとは全く違うことが多々あります。

変数に対応できるようになるためには経験が必要です。

しかし経験は急には身に付きません。

そこで経験を借りるために、経験者にフォローしてもらいます。

手術であれば、通常は上級者が正面で助手をしながらフォローすることになっています。(緊急時や人手不足の際はフォローが入らないこともありますが)

経験者であればリスクを事前に予測し回避することができます。

経験値が上がるまではフォローをしてもらいながら、経験を積み重ねることが重要です。

さいごに

今回は僕の医療現場での経験をもとにお話ししましたが、全ての事柄に当てはまるものです。

物事の本質は一緒です。

あなたのおかれたシチュエーションに置き換えて活用してください。