発酵食品で炎症を抑える

発酵食品とは

ドクトルけんじ

あなたは普段、発酵食品を摂取していますか?

発酵食品とは、微生物の増殖により産生する物質を利用したり、微生物の酵素による働きを利用して、食品材料の変化をおこさせた食品の総称です。

そもそも発酵とはどういう現象のことを指すのでしょうか。

発酵とは、微生物を利用して物質を生成したり、分解することです。

ここでいう微生物とは、酵母、カビ、細菌です。

また発酵によって食品加工を行うことを醸造、できた食品を発酵食品、あるいは醸造品といいます。

酵母を使用するものとしてはアルコールがあります。例として、ビール、ワイン、その他の果実酒、パンなどがあげられます。

カビを利用するものとしては、かつお節やチーズがあります。

さらにカビと酵母を併用するものとして、糖化とアルコール発酵を行う焼酎(しょうちゅう)類があります。

また、細菌を利用するものとしては、納豆、ヨーグルト、チーズ、漬物の一種、酢の一部などがあります。

カビ、酵母、細菌の三者をうまく組み合わせて発酵させたのち、熟成させる最強の発酵食品としては、みそ、しょうゆ、清酒など、日本独特の食品が多いです。

発酵食品の特徴は微生物の作用よって多くの物質がつくられ、絶妙な風味がつくられ、もとの材料にない味ができ、非常に食品的な価値が高くなるという点にあります。

発酵食品を摂取することで腸内細菌の状態が改善し健康によい影響を及ぼすことは様々な証拠から明らかになっています。

腸内細菌とは

この度、スタンフォード大学医学部の研究者らによって、発酵食品を多く含む食事は、腸内細菌の多様性を高め炎症を抑えることが明らかになりました。

腸内細菌とは、ヒトの腸管(主に大腸)に生息する約1000種類、100兆個にも及ぶ菌のことです。

腸内細菌は腸内細菌叢(そう)や腸内フローラとよばれます。

ヒトの腸内細菌は、善玉の菌と悪玉の菌、中間の菌の大きく3グループに分けられます。その数は多い順に並べると中間の菌>善玉菌>悪玉菌となります。

腸内細菌の種類は個人によって異なり、食事・風土などの要因によっても異なるとされています。また、菌の数は年齢によって増減はあるものの、菌の種類は一生を通じてほとんど変わらないことされています。

悪玉菌は、タンパク質や脂質が中心の食事、不規則な生活、ストレス、便秘などが原因で増えてきます。悪玉菌が増えると、肥満、糖尿病、大腸がん、動脈硬化症、炎症性腸疾患などになる危険性が高くなります。

健康な人は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が多い状態です。

善玉菌は乳酸や酢酸などを作り、腸内を酸性にすることによって、悪玉菌の増殖を抑え、腸の運動を活発にし、食中毒など腸感染症の予防や、発がん性をもつ腐敗産物の産生を抑制します。

また善玉菌は腸内でさまざまなビタミン(B1・B2・B6・B12・K・ニコチン酸・葉酸)を産生します。さらに善玉菌には、体の免疫機能を高め、血清コレステロールっを低下させる効果も報告されています。

腸内細菌の乱れで炎症が誘発

腸内細菌の乱れは炎症を引き起こします。炎症はさまざまな病気の原因となります。

身近なところでは風邪のようにウイルス感染した際に起こる熱などの症状が炎症による反応です。

関節リウマチで関節が破壊されるのも炎症による影響です。

炎症が慢性化すると、ガンや心筋梗塞、脳梗塞などの原因にもなります。

新型コロナウイルス感染症で重症化するのも、炎症によるサイトカインストームが原因と分かっています。

このように様々な病気の原因になる炎症を、発酵食品を摂取することで抑えられることが分かったのは、大きな発見です。

今回の研究は、36人の健康な成人を対象に、発酵食品の多い食品を含む食事を10週間与え、腸内細菌がどのように変化するかを調べました。

結果は

ヨーグルト、ケフィア、発酵させたカッテージチーズ、キムチなどの発酵野菜を食べると、全体的な微生物の多様性が増加し、多くの量を食べるほどより強い効果が見られました。

さらに血液中に含まれる19種類の炎症性タンパク質の濃度も低下しました。

炎症性タンパク質の1つであるインターロイキン6は、関節リウマチ、2型糖尿病、慢性的なストレスなどの症状に関連しています。

スタンフォード大学予防研究センターのRehnborg Farquhar教授は次のように述べています。

腸内細菌をターゲットとした食事は、免疫状態を変化させることができ、健康な成人の炎症を抑制する有望な手段となります。この結果は、発酵食品を多く摂取した参加者に一貫して見られました

発酵食品の摂取は体重維持に役立ち、糖尿病、がん、心血管疾患のリスクを低下させます。

毎日一品でもいいので献立に発酵食品を加えるよう心がけてください!