腰椎変性すべり症【専門医解説】

変性すべり症とは

思春期に激しいスポーツをした結果、腰の骨(腰椎)の関節に疲労骨折を起こすものを分離すべり症といいます。

分離すべり症に対し、腰椎の関節に疲労骨折を伴わないすべり症を昔は無分離すべり症と呼んでいました。

今は無分離すべり症という表現はせず、変性すべり症と呼ぶようになっています。

変性すべり症の語源は、腰椎の関節や椎間板が退行変性する結果、すべり症になるためです。

退行変性とは、組織や細胞の機能が減退することです。簡単に言えば老化現象です。

腰椎同士を接続している関節や椎間板に老化現象が起こる結果、腰椎同士の接続がゆるみずれていってしまいます。

こちらの動画が分かりやすいのでご覧ください。

変性すべり症の動画

腰痛で医療機関を受診した人の3%ほどに腰椎変性すべり症を認めるとの報告があります。

すべり症はどこまでもすべるわけではありません。30%以上すべることはほとんどありません。

症状

関節や椎間板がグラグラになる影響で腰痛が出やすくなります。

腰椎がすべった結果、腰椎の中を通過する脊髄神経が圧迫されると、下肢の痛みやしびれ麻痺や、小便や大便の調節が苦手になるといった症状が出現することがあります。腰を反らすと脊髄神経の圧迫が強まるので症状が増します

診断

腰を曲げたり反らしたりしてレントゲンを撮影すると、腰椎がすべるのを確認できます。

MRIにて脊髄神経の圧迫状況が確認できます。

歩行によって症状がどのように出現するかも診断の助けになります。

治療

手術以外の治療

まずは手術以外の方法で症状を落ち着かせることを目指します。

症状を落ち着かせるには以下の方法があります。

日常生活で無理をしない

腰に負担をかけると、腰椎にすべりが強まり症状が悪化します。長時間の中腰作業や座りっぱなしでの仕事は負担になるので避けましょう。どうしてもしなければならない場合は、30分ごとに休憩をとったり、イスやクッションを工夫するなどの対策を行いましょう。

コルセットを使用する

腰に負担をかける作業を行う際は腰椎用のコルセットを使用し、腰にかかる負担を軽減させましょう。

薬を使用する

消炎鎮痛剤や筋緊張緩和剤の内服をおこなったり、消炎鎮痛作用のある湿布や塗り薬を使ったりして、症状を抑えます。下肢のしびれには神経の栄養剤であるビタミンB12や、脊髄神経の血流を増加させるプロスタグランジンE1製剤などを使用します。

ブロック注射

痛み止めや炎症を抑える薬液を神経周囲に注入して、痛みの伝達路をブロックする治療法をブロック注射と呼びます。腰椎の関節に注射をする椎間関節ブロック、脊髄神経の周りに薬液を流す硬膜外ブロック、脊髄から下肢に枝分かれする神経根に注射をする神経根ブロックなどがあります。数回繰り返しても症状の改善がなく、生活に支障をきたすレベルであれば手術を検討します。

手術による治療

神経を圧迫している厚くなった靭帯や変形して飛び出した骨、変性した椎間板などを取り除きます。椎間板を取り除いた場所にスペーサーを入れます。腰椎同士を金属製のスクリュー(ネジ)とロッド(棒)で連結させ固定します。さらに骨を移植して骨による固定も行います。

こちらの動画が分かりやすいのでご参考にしてください。