潜在意識へのアプローチ法

はじめに

僕は医師でありながら悪性腫瘍の末期となり余命1カ月の宣告を受けたり、再発して余命3カ月と宣告されたり、治療中に転倒し脳出血を起こし1週間生死の境をさまよったりした経験をしたことで、色々なことに気付かされました。

そのなかでも特に大きな気付きだったのが潜在意識についてです。

潜在意識がどのようなものか理解するのはとても難しいです。

なぜならば潜在という言葉が意味するように、外にあらわれず内にひそんでいるためです。つまり潜在意識は内に潜んでいる意識なので自覚できないわけです。

しかし潜在意識は存在しますし、あなたが思っている以上に発言や行動、人生に影響を及ぼしています。

僕は病気を作ったり治したりするのも潜在意識が大きく関わっていると考えています。

この考えは医師として、患者として感じてきました。

今回は潜在意識についてお話していきたいと思います。

この記事を読めば、潜在意識について理解が深まり、潜在意識の力を病気の治癒や健康維持、願望実現などに活用できるようになります。

意識とは

そもそも潜在意識の意識とはなんなのでしょうか。

意識という言葉は医学のもならず哲学や心理学などにおいても中心的な議題となるため、簡単には説明できません。

小学生にも分かるように一言で説明するなら、

自分や自分の周りのことが分かっている状態

を意識といいます。

ニュースでよく耳にする「意識不明の重体です」とは、自分や自分の周りのことが分かっているのかが不明なほど重体ですという意味になります。

医学の分野最近ではfMRIという脳の活動を測定できるMRIによって、科学的に意識について解明されてきました。意識する対象によって脳の特定の部分が連携して働くことが分かってきましたが、まだ全容をつかむことはできていません。少なくとも脳と意識には何らかの関係があることは間違いなさそうです。

哲学の分野では「われ思うゆえにわれあり」の言葉で有名なデカルトが、意識に関する基礎を築きました。デカルトは思索するなかで、自分という存在を意識できていることにハッと気付き「われ思うにわれあり」と言ったわけです。この気付きからデカルトは、人間は意識から作られているという実体二元論という考えを提唱しました。

仏教にも意識という考えがあります。眼、耳、鼻、舌、身の五識によって認識する色、声、香味、触の五境認識、推理、追想する心の働きを意識と呼んでいます。意識は第六識、第六感とも表現し、五識を統一する存在とされています。

このように他分野で長年に渡って議論されながらも明確な答えが出ていないのが意識です。

潜在意識とは

意識は顕在意識潜在意識に分けて語られることが多いです。

顕在意識とは自分自身で自覚できる意識です。例えば気温が低い日に外に出て「今日は寒いな」というのが潜在意識です。

潜在意識は逆に自分自身で自覚できない意識ということになります。

もっと詳しく説明すると、潜在意識とは、過去の経験などによって無意識のうちに蓄積された価値観、習慣、思い込みから形成された、自覚されていない意識のことです。

自覚できないので顕在意識のように言語化できません。いわゆる無意識に何かを行っているときは潜在意識が関わっています。

潜在意識は意識全体の9割以上を占めるとされ、人の日常行動・ひらめきや直感、思考、非常時・緊急時の対応などの決定に影響していると言われています。

潜在意識についてはじめに注目したのはオーストリアの精神科医フロイトです。フロイトは深層心理学による精神分析や夢診断を確立した人物として有名です。

他にもユングやアドラーといった有名な心理学者にいよって、潜在意識について深く研究され、いまだに様々な仮説が提唱されています。

今までの研究結果で明らかになってのは

  • 潜在意識の状態ははっきりとは自覚できない
  • 潜在意識の力は強く、顕在意識に大きな影響を及ぼす
  • 潜在意識を変えることは容易ではない

ということです。

そのため知らず知らずのうちに潜在意識が、瞬間瞬間の行動や発言に影響を与え、人生の方向性を決定しています。

例えば大事な人を失った経験や虐待を受けたことがあると、潜在意識で「自分は幸せになってはいけない」と考えるようになります。これを自己懲罰意識と呼びます。

自己懲罰意識が潜在意識に存在すると、顕在意識に影響しを与え、幸せにならない選択や言動を繰り返してしまいます。

このような状況を変えにくい原因のひとつに、顕在意識によって表面に現れる人格が潜在意識の人格と真逆のことが多いことがあります。

表面上明るく振舞っている人が、実は壮絶な過去を経験していたというようなことがよくあります。

自己懲罰意識のような潜在意識から発生する願望は、体にも影響を与えます。

僕が病気になったのが、まさにこのパターンでした。

悪性腫瘍が見つかるまで、医療の最前線でずっと激務をこなし続けていました。

終わりのない状況に心は疲弊しきっていました。

それでも自分の代わりはいないから頑張り続けるしかないと、毎朝自分を奮い立たせて働き続けていました。

しかし潜在意識では「もう限界だ。休みたい。病気にでもなれば休めるのに。」と考えていました。潜在意識の声なのでこの時は全く気付いていませんでした。正確には気付かないふりをしていました。

潜在意識の声にはっきり気付いたのは、余命宣告された瞬間です。

余命1カ月と知らされた瞬間、自分でも信じられないことにホッと安堵したのです。

そのとき潜在意識の「これでやっと休める」という声を耳にしました。

無意識の願望は自分自身でも気付いていないことが多いのですが、顕在意識をどけていって潜在意識に近付くことで気付けるようになります。

しかしこれには潜在意識にアプローチする訓練が必要です。

潜在意識にアプローチする方法

最も有効な訓練は瞑想座禅です。

瞑想や座禅を行うと、初めは顕在意識の声ばかり聞こえます。その声を消そうとすると余計に顕在意識にとらわれてしまうので、声を受け流してください。

瞑想や座禅と聞くと身構えてしまいますが、毎日寝る前か寝起きに5分間、楽な姿勢でゆっくる呼吸をするだけで十分です。呼吸に意識を集中して、息を吸うと空気が肺に入って膨らみ、吐くと肺が縮まるのを感じます。

寝る前や寝起きは意識が混濁していて顕在意識と潜在意識の境界が曖昧になっているので、潜在意識にアプローチしやすくなっています。

はじめは自分の頭の中に顕在意識の声が浮かんできます。顕在意識の声は潜在意識にアプローチするのを邪魔するので対処する必要があります。顕在意識の声への対処法を説明します。

コツとしては顕在意識の声に「」をつけて、最後に「…と言っている」とします。こうすることで顕在意識の声を客観的に観察できるようになります。

例えば「明日は朝から仕事で嫌だな」という顕在意識の声が聞こえたら、

『「明日は朝から仕事で嫌だな」と言っている』とします。

これを繰り返して顕在意識の声を流し続けると、だんだん顕在意識の声が減ってきます。

顕在意識の声が減って静かになってきたら潜在意識に近付いていきます。

頭の中で地下に続く階段を下りていって、潜在意識の部屋に入るのをイメージしてください。

部屋に入ると潜在意識の声に気付けるようになります。すぐには難しいですが、繰り返し訓練することで、言葉ではなく気付きやひらめきとして潜在意識のメッセージを受け取れるようになります。

僕の場合は「頑張りすぎる生き方はもう止めるように」というメッセージを受け取りました。

また潜在意識の部屋で理想の状態を繰り返しイメージすることで、潜在意識を徐々に変えることができます。

僕の場合は悪性腫瘍が消えてなくなり、元気になる姿を繰り返しイメージしました。

ブッダをはじめとして僧侶や前述したフロイト、Apple創業者スティーブ・ジョブスなど名だたる人たちが座禅や瞑想を行ってきました。瞑想や座禅はともて有効な方法なのでぜひ試してみてください。

もうひとつ潜在意識にアプローチするお勧めの方法があります。

それは夢日記をつけることです。

夢は潜在意識と繋がっています。

枕元にノートとペンを用意しておいて、目が覚めたらすぐに夢を記録するようにしてください。直接的な表現ではなく間接的なイメージとして夢に反映されていることが多いので、解釈するのには慣れが必要ですが、続けるなかで、「あっ、これはあのことを言っているのかも」と分かるようになってきます。

ゼロポイントフィールドとつながる

潜在意識は集合的無意識と繋がっていると考えられています。

集合的無意識とは人類の潜在意識はつながっているという考えです。

集合的無意識とはなにもスピリチュアルやオカルト的な話ではありません。

物理学の世界でも宇宙の過去、現在、未来すべての情報が蓄積されている場があるという「ゼロポイントフィールド仮説」が注目されており、潜在意識はゼロポイントフィールドに繋がっていると考えられています。

デジャブやシンクロニシティ、虫の知らせ、予感、正夢などはゼロポイントフィールドと潜在意識がつながることで起こると考えられています。

リーディングで有名なエドガー・ケーシーは、催眠状態になってアカシックレコードと呼ばれる集合知にアクセスすることで、あらゆる分野の質問に答えることができました。アカシックレコードこそゼロポイントフィールドなんだと思います。

潜在意識がゼロポイントフィールドに繋がることができれば、悟りを開いたり、偉大な発明や発見をしたりできるようになります。

身近なことでいえば、病気や体の不調にいち早く気付けるようになれます。

僕は瞑想を行ったり夢からのメッセージを記録する習慣を身に付けたことで、自分で再発に気付くことができました。

難しいことではないので、あなたも5分間の瞑想と夢日記を習慣にしてください。