あなたはしびれが続いたとしたら何を心配しますか?
おそらく脳や神経に何か問題が起こっているのではないかと心配になると思います。
しびれに不安を抱えて日々多くの方が医療機関を受診しています。
ほとんどが深刻な問題がないのですが、原因が分からないと不安になるものです。
逆に原因が分かれば安心できます。
そこで今回は、しびれの原因についてお話したいと思います。
この記事を読めば、しびれについて理解し不安を軽減することができるようになります。
しびれとは
しびれを不安に感じる原因のひとつとして、しびれという言葉の意味が曖昧だということがあります。
そこでまず、しびれという言葉の意味について解説していきます。
しびれは漢字で痺れと書きます。麻痺(まひ)の痺です。
しびれという言葉はとても曖昧です。
痺れの意味は国語辞典によると
(動詞「しびれる(痺)」の連用形の名詞化)。感覚異常の一つ.神経系あるいは循環系の障害により,運動神経,または知覚神経が侵された状態となり,運動麻痺,知覚麻痺を起こす
精選版日本国語大辞典 第二巻,2006,小学館
となっています。
医学事典にはしびれ感の説明として
感覚過敏や異常感覚、感覚鈍麻、ときに運動障害(力が入らない状態)をも意味する日常語で,本来の医学用語ではないが,感覚過敏や異常感覚の場合に用いることが多い.
南山堂医学大辞典
と記載されています。
感覚過敏とは通常の感覚刺激に対し正常以上に強く感じることをいいます。
異常感覚とは外的刺激が加えられた際に本来とは異なった感覚を自覚する場合と、外的刺激がないにもかかわらずビリビリ,ジンジンなどと表される感覚を自覚する場合があります。
感覚鈍麻とは感覚が分かりにくい状態です。
しびれという言葉はとてもたくさんの症状を含んでいます。
実際にカルテにしびれについて記載する場合は、さらに詳しくお話を伺って以下のように表現します。
- 触っが感覚がにぶい
- 熱さや冷たさなどの温度が感じにくい
- 痛みを感じにくい
- ジンジンする
- ビリビリする
- 針でさされたようにチクチクする
- 力が入りにくい
- 動かしにく
ここに挙げたのは一部ですが、これだけ多彩な症状がしびれという一言には含まれています。
しびれが生じる原因
しびれとはどのようにして起こるのでしょうか。
前述した国語辞典に答えが書かれています。もう一度見てみましょう。
(動詞「しびれる(痺)」の連用形の名詞化)。感覚異常の一つ.神経系あるいは循環系の障害により,運動神経,または知覚神経が侵された状態となり,運動麻痺,知覚麻痺を起こす
精選版日本国語大辞典 第二巻,2006,小学館
アンダーラインのところが答えになっています。
しびれの原因は神経系か循環系の障害によっておこります。
これだけでは分からないので、さらに詳しく解説していきます。
まずは神経系障害についてです。
神経系障害
神経系とは中枢神経(脳、脊髄)から末梢神経までを含む全身すべての神経のことです。
神経は全身に網の目のように張り巡らされています。網の目のどこかにほころびが生じるとしびれとして異常を知らせてくれます。
神経には大きく分けて運動神経と感覚神経、自律神経があります。
運動神経は頭で体を動かそうとした際に脳からの指示を筋肉に伝える神経です。
感覚神経は全身の感覚を脳に伝える神経です。
自律神経は心臓や内臓を動かしたり、汗をかいたり、血管の硬さを調節したりするといった体をそのときどきでベストな状態に保つために働く神経です。
このうちしびれに関係するのは感覚神経と運動神経です。
運動神経が障害された場合は、脳から筋肉にいたる神経のどこかに異常が生じたことで、脳の電気信号が筋肉に伝わらなくなり、思うように体を動かせなくなります。しびれの詳細が「力が入らない」「動かしにくい」という場合は運動神経の障害が疑われます。
感覚神経が障害された場合は、皮膚などに存在する感覚受容体から脳にいたる神経のどこかに異常が生じたことで、感覚の電気信号が脳に伝わらなくなり、感覚が鈍くなったり異常な感覚として感じたりしてしまいます。しびれの詳細が「感覚がにぶい」「熱さや冷たさなどの温度が感じにくい」「痛みを感じにくい」「ジンジンする」「ビリビリする」「針でさされたようにチクチクする」という場合は感覚神経の障害が疑われます。
感覚障害を起こす主な病気としては、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、脊髄損傷、脊髄腫瘍、神経腫瘍、末梢神経損傷(腕神経叢麻痺、尺骨神経麻痺、橈骨神経麻痺、腓骨神経麻痺、骨折や脱臼にともなう神経損傷etc.)などがあります。
循環障害
循環障害とは血液の循環が障害されることを意味します。つまり血の巡りが悪くなることを循環障害といいます。病院で心臓を専門にみる内科を循環器内科といいます。
心臓か血管に問題があると循環障害が起こります。
循環障害におけるしびれの詳細は「ジンジン」「チクチク」などの異常感覚が多く聞かれます。
循環障害が起こる主な病気は、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、心臓病、深部静脈血栓症などがあります。
なぜ循環障害が起こるとしびれが生じるのかについて説明します。
感覚をつかさどる末梢神経線維には,有髄線維(A線維とB線維)と無髄線維(C線維)があります。A線維のうちAβは感覚・振動知覚・位置覚をつかさどり、Aδはチクッとする早い痛みと温度覚をつかさどります。C線維はジーンとする遅い痛みを伝達します。
有髄線維は循環障害には弱いという特徴があるため、循環障害が起こるとA線維の機能が低下し触覚が低下します。しかしC線維は影響を受けにくいため,弱いジーンとする痛みは伝わりやすい状態が続きます。その結果「ジンジン」と表現するしびれを訴えるものと考えらえます。「チクチク」は有髄繊維に血流が戻ったときに生じると考えられており、循環障害が一時的に改善した際に出現するしびれだと思われます。
まとめ
しびれという言葉は多くの症状を含んでいるため、具体的にどんなしびれであるかが重要となってきます。
しびれは神経障害か循環障害が原因で起こります。
神経障害も循環障害も放置しておくと命に関わる危険性が高いため、しびれという感覚を使って危険信号を発してくれています。
一時的な軽いしびれであれば問題ないことがほとんどですが、症状が強く長く続く場合は医療機関の受診を検討しましょう。
脳神経内科、神経内科、脳神経外科、整形外科が運動神経、感覚神経が原因のしびれに関しては専門となります。皮膚の冷たさを伴ってジンジンしびれる場合は循環器内科を受診してください。
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