カカオは若返りの薬

カカオによる血管拡張

カカオ豆から抽出された植物栄養素であるカカオフラバノールは、カカオパウダーに豊富に含まれています。

カカオフラバノールは血管を拡げる「血管拡張」効果があり、血流を増加させるのに役立ちます。その結果、血栓を防ぎ、記憶力の低下を予防する効果があります。

リバプールホープ大学とリバプールジョンムーア大学の科学者チームは、医学誌European Journal of AppliedPhysiologyに、40〜60歳の運動不足な大人のグループにおける運動する際のカカオフラバノールの効果を研究した論文を発表しました。

運動不足になると、筋肉に血液を供給する能力が障害され、酸素供給速度が遅くなり、運動の開始時に酸素消費量が増加します。

研究の結果、カカオフラバノールが血流を改善することで、より速い酸素摂取動態に寄与することを発見しました。

リハビリや運動を継続するのに障壁となるのは、リハビリや運動による体が感じる不快感です。体育の長距離走やマラソン大会で苦しいと感じるあの不快感です。

カカオフラバノールによって、運動に耐える能力が改善すれば、不快感が減り、リハビリや運動を継続できるようになる可能が高まります。

カカオフラバノールはサプリメントとしても入手可能であり、アマチュアアスリートがパフォーマンスを高めるために使用したりします。

研究内容

研究に参加した被験者は平均年齢が45歳で、通常は週に2時間未満の運動トレーニングに従事している健康な中年の男性と女性のグループです。

まずはじめに、エアロバイクを使用して、運動中に体が使用できる酸素の最大量などを計測しました。

次に、被験者は、7日間にわたって毎日400mgのカカオフラバノールサプリメントまたはプラセボのいずれかを与えられました。

その後再度エアロバイクを使用し、体が使用できる酸素の最大量等を計測したところ、τVO2(酸素供給が運動の要求に反応するのにかかる時間。応答時間が短いほど、運動に耐えられるようになります。)に驚くべき変化を認めました。

それはカカオフラバノールを摂取した被験者が適度な運動を受けたとき、 τ VO2が約40秒から34秒に大幅に短縮されたことです。

科学者たちは次のように付け加えています。「被験者がカカオフラバノールを補給した後に観察されたτVO2の減少は、若い健康な人の値に近付いたことを示しています。」

そして、論文は次のように述べています。

「最終的に、本研究の結果は、カカオフラバノールが中年成人の日常生活活動への耐性を改善する可能性を示している

ココアでストレス対策

Nutrientsに掲載されたバーミンガム大学の研究者による別の研究では、被験者にフラバノールを多く含まない飲み物と、高レベルのフラバノールを含むココア飲料を与え比較すると、後者の方が精神的ストレス時に血管がよりよく機能することがわかりました。

この研究は、フラバノールがストレス誘発性虚血に役立つと同時に、ストレスの多い時期に摂る食事に何が適しているかを教えてくれています。

フラボノイドは、ココアだけでなく、緑茶、果物、野菜にも豊富に含まれており、抗炎症作用と抗酸化作用があります。

カカオの脳への影響

イリノイ大学とバーミンガム大学の研究チームは、Scientific Reports.にココアフラバノールが脳に及ぼす影響に対する研究論文を発表しました。

研究では18名の参加者を、フラバノールが豊富なココアを摂取した人たちと、フラバノールの含有量が非常に少ない加工ココアを摂取した人たちに分けて比較しました。

被験者も研究者も、どの種類のココアを摂取したか分からないようにしました。この方法は二重盲検試験と呼ばれ、研究者や参加者の期待が結果に影響を与えることを防いでいます。

ココアを摂取してから約2時間後、参加者は空気中の通常濃度の約100倍の5%の二酸化炭素を含む空気を吸い、脳の血管系の反応を調べました。

二酸化炭素をたくさん吸うと、体は脳への血流を増加させます。その結果、脳により多くの酸素を取り込み、より多くの二酸化炭素を除去するようになります。

その後、 機能的近赤外分光法という、脳への血流の変化を光で捉える方法を用いて前頭皮質の酸素量を測定しました。 これ方法により、脳が過剰な二酸化炭素からどれだけ身を守ろうとしているかを測定することができます。

さらに被験者に、複雑なタスクに挑戦させました。その結果、

被験者のほとんどは、ココアフラバノールを摂取した後で、脳の酸素化反応がより強く、より速くなっていました。

最大酸素化のレベルは、高フラバノールのココアと低フラバノールのココアで3倍以上高く、酸素化反応は約1分早くなっていました。

最も困難な認知テストにおいても、高フラバノールココアを摂取した人たちは11%速く問題を正しく解くことができ、より良いパフォーマンスを示しました。

しかし、簡単なタスクのパフォーマンスには差はありませんでした。

このことは、フラバノールが有益なのは、より困難な認知タスクの間だけかもしれないことを示唆しています。

とはいえ全体的に、フラバノールによる血管活動の改善が認知機能の改善に接続されていることを示唆しています。