はじめに
ケガをした記憶がないのに、指先に痛み、腫れ、熱をもつことがあります。
このような時、さかむけや深爪したところから細菌が入り込んでいる可能性があります。
僕は陶芸をするのですが、先日さかむけから細菌が入り込み、指先がパンパンに腫れ上げって激痛が出て大変な思いをしました。
指の腹側(指紋のある側)に細菌が感染しているものを瘭疽(ひょうそ)、爪の周囲に細菌が感染しているものを爪周囲炎といいます。
今回は誰もがなる可能性がある瘭疽、爪周囲炎について分けりやすく解説します。
この記事を読めば、瘭疽、爪周囲炎を予防し、早期発見早期治療できるようになります。
瘭疽(ひょうそ)
小さなトゲが刺さったりして小さな傷ができると、その場所から細菌が入り込み、痛みや腫れ、赤みが出ます。これを瘭疽(ひょうそ)といいます。
皮膚の役割のひとつに、体の表面を保護するバリヤー機能があります。
皮膚の表面には無数の細菌が存在しますが、普段は皮膚のバリヤー機能があるため、問題なく過ごしています。
しかしさかむけや傷ができると、皮膚によるバリヤー機能が失われてしまいます。
するとそこから細菌が内部に入り込んできます。
内部は細菌に対して抵抗力が弱いため、細菌が増殖してしまいます。
そこに細菌を排除しようとして免疫細胞が集まってきます。
細菌と免疫細胞のバトルが起こり、腫れたり熱をもったり痛みが出るなどの感染諸症状が出現します。
感染諸症状は不快なものですが、意味があります。
ひとつは体に異常が起きていることを知らせるためです。
異常を感じることで、その部位に無理な負担をかけないようになります。
また炎症が起こることで細菌が死滅しやすい環境を作っています。細菌は熱に弱いからです。
さらに熱が高い状態になると、免疫細胞が活発に働くことができます。
瘭疽の原因となる主な細菌は黄色ブドウ球菌です。
黄色ブドウ球菌は皮膚表面に元々多く存在している細菌です。
転んでケガをして膿(うみ)ができたり、手術後の傷が膿んでしまうのも、黄色ブドウ球菌が原因のことが多いです。
ちなみに膿の正体は、細菌をやっつけるために集まってきた免疫細胞の死骸の塊です。
普通のケガで細菌が感染した場合は、外側に膿が出ます。
しかし瘭疽の場合、傷が小さいため膿が外に出ず、中に溜まってしまいます。
中に溜まるため、圧がどんどん高まり、激しい痛みになります。
さらに外に出られないことで、感染が奥に進んでしまい、指先の骨に細菌が進行してしまいます。その結果、骨髄炎を起こし骨を溶かしてしまうこともあります。
初期であれば抗生物質の内服や点滴で細菌をやっつけて治療することができます。
しかし進行してしまうと抗生物質だけでは治療困難なため、皮膚を切開して中を洗う必要があります。
爪周囲炎
指のさかむけや小さな傷から細菌が入り込んで、爪の側面や根本で細菌が繁殖し、熱や発赤、腫れ、痛みが出現したものを爪周囲炎といいます。
瘭疽が爪の周囲に起こったものが爪周囲炎です。
原因となる細菌は瘭疽と一緒で黄色ブドウ球菌が多いです。ただし長期に症状が続く場合はカンジダというカビの一種が原因の可能性があります。
治療としては指先の手洗いや消毒を行うことで清潔に保ち、抗生物質の内服や点滴を行います。
症状が強い場合は皮膚を切開し、中に溜まった膿を洗い流します。
僕が陶芸をやっていてなったのは爪周囲炎でした。原因はさかむけから細菌が入ったことでした。初期で気付けたので、圧迫して膿を絞り出し、手洗いをしっかり行うことで治癒できました。
瘭疽、爪周囲炎の予防
日ごろからハンドクリームを塗ったり、ネイルケアを行うなどして、さかむけができないように気を付けましょう。
指先を清潔に保つことも予防として大切です。
トゲのある木材を触ったり、土を触る際は、できるだけ手袋を使用するようにしましょう。
悪化の予防には早期治療が重要です。早い段階であれば抗生物質の飲み薬を内服するだけで治ることがほとんどです。
瘭疽や爪周囲炎を疑う症状があれば、早めに皮膚科を受診しましょう。
さいごに
瘭疽や爪周囲炎は進行すると骨に達して骨髄炎を起こし骨を溶かしてしまったり、手のひら全体に広がってしまったりします。そうなると手術による治療が必要になり、治るまで長い時間を要すうえに大きな傷が残ってしまいます。
指先の感染だとあなどらず、早めに皮膚科を受診してください。
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