腰部脊柱管狭窄症とは
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)とは、腰の神経の通り道である脊柱管※1が狭くなることで、神経の束である脊髄神経(せきずいしんけい)※2が圧迫されて様々な症状が現れる病気です。
※1脊柱管:脊柱管とは首の骨や背骨、腰骨の一部がドーナツ状になっている部分で、脊髄神経の通り道となっています。脊柱管は骨以外にも椎間板や靭帯(じんたい)などで構成されています。
※2脊髄神経:脊髄神経とは脳と直接つながっている神経の束です。脳からの指令を体に伝えたり、体の感覚を脳に伝えたりする役割があります。
脊柱管と呼ばれるドーナツ状の部分を脊髄神経が通っています。
脊髄神経は場所によって次の4つの部分に分けられます。
- 頚髄(けいずい):首の骨を通る部分
- 胸髄(きょうずい):背骨の骨を通る部分
- 腰髄(ようずい):腰の骨を通る部分
- 仙髄(せんずい):骨盤を通る部分
老化などが原因で腰の脊柱管が狭くなると腰髄が圧迫されます。
腰髄は両脚の運動や感覚のほかに、便や尿を調節するのに関係する神経の集まりです。
そのため腰の脊柱管が狭くなる腰部脊柱管狭窄症では、両脚や便、尿に関係する症状が出現します。
腰部脊柱管狭窄症について詳しく知りたい方はこちら↓
今回は腰部脊柱管狭窄症に使う薬について解説します。
★腰部脊柱管狭窄症の症状がつらい
★腰部脊柱管狭窄症に対して処方されている薬について知りたい
★腰部脊柱管狭窄症に薬が有効なのか知りたい
この記事を読めば、腰部脊柱管狭窄症に対する薬について知ることができます
腰部脊柱管狭窄症によく使われる薬
腰部脊柱管狭窄症に対して医療機関で処方される薬には
- 痛みや炎症を抑える薬=非ステロイド性抗炎症薬(ロキソプロフェンナトリウム、セレコキシブなど)
- 筋肉の緊張を和らげる薬=筋弛緩薬(リンラキサー、ミオナールなど)
- 神経の栄養剤=ビタミンB12(メチルコバラミン、メチコバールなど)
- 腰の血流を良くする薬=プロスタグランジンE(オパルモンなど)
があります。
①に関しては、腰部脊柱管狭窄症に限らず頭痛や骨折、腰痛、手術後の痛みなど、様々な痛みに対して使われます。
②に関しては、腰痛や肩こりにもよく使われます。
③は手足のシビレや目や耳のトラブルなど、神経が関わるもの全般に使われます。
④は腰部脊柱管狭窄症や動脈の血流が悪くなる病気で使われます。
いずれも腰部脊柱管狭窄症の症状を緩和するのが目的であって、治すのが目的ではありません。
腰部脊柱管狭窄症に対して薬は効果的か
結論からお話すると
- 非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩薬、ビタミンB12が腰部脊柱管狭窄症の治療に有効であるという証拠は不足しています。
- プロスタグランジンEは神経性跛行ならびに両下肢のしびれを伴う馬尾症状(お尻の感覚障害、尿や便の調節ができない、勃起不全など)を有する腰部脊柱管狭窄症の治療に短期間有効です。
詳しく解説していきます。
腰部脊柱管狭窄症に対する非ステロイド性抗炎症薬、筋弛緩薬、ビタミンB12の内服に対する様々な文献を検証した結果、これら薬剤が有効であるという証拠は得られませんでした。
プロスタグランジンEはどうでしょうか。
腰部脊柱管狭窄症でプロスタグランジンE(リマプロスト15 μg/日)を内服した人たちと、消炎鎮痛剤(エトドラク400 mg/日)を内服した人たちを比較した研究があります。
プロスタグランジンEを内服した人は34人、消炎鎮痛剤は32人で、8週間内服を続けました。
8週後に
- QOL(生活の質)
- 腰痛
- 下肢のしびれ
- 歩行距離
- 主訴の改善
- 満足度
を評価しました。
その結果
プロスタグランジンEを内服した人たちがQOL、下肢しびれ、歩行距離に改善がみられてました。
特に軽症の人たちがよく改善していました。
この結果から
プロスタグランジンEは腰部脊柱管狭窄症の治療に短期間は有効
という証拠が得られました。
しかしプロスタグランジンEには欠点があります。
それは血流を良くする反面、出血しやすくなるというものです。
僕が担当した患者さんでも、何もしていないのに全身に内出血を起こして重体となり、輸血をした人がいます。
そこでより安全に使用できる血流を改善する薬として、漢方薬があります。
残念ながら漢方薬に関して有効性を証明した研究はないのですが、4000年以上という長きにわたって使われ続けていることが何よりもの証明だと思います。
体力がある腰部脊柱管狭窄症の人は、牛車腎気丸と桂枝茯苓丸を一緒に飲むことで症状が改善しするのでオススメです。
ただし漢方薬にも副作用はあるので、医師や薬剤師に相談のうえ、用法容量を守って内服してください。