腰以外が原因の腰痛【専門医解説】

はじめに

腰が痛くなると、つい腰が原因だと思いがちです。

しかし腰以外の病気が原因で腰が痛くなることも多々あります。

なかにはすぐに治療をしないと命に関わるものもあります。

今回は腰が痛くなる腰以外の病気についてお話します。

腰か腰以外が

腰痛の原因が腰か、腰以外かを判断するには、痛みの特徴が役に立ちます。

腰が原因であれば横向きに寝て安静にしていれば痛みが楽になり、腰を動かすと痛みが出ます。

腰以外が原因の場合は、横になって安静にしていても痛みを訴え、体の動きに関係なく痛みが存在します。また脂汗をかくように苦悶しながら痛がるのも特徴です。痛みに波がある(強まったり消えたりを繰り返す)場合も腰以外に原因がある可能性を疑います。

腰痛の場合、初めは整形外科を受診するケースが多いですが、腰以外の原因が疑われる場合は内科や血管外科、泌尿器科にバトンタッチして検査、治療を行うことになります。

腰痛の原因となる病気について、順番に説明していきます。

解離性大動脈瘤(かいりせいだいどうみゃくりゅう)

腰痛になる病気で最も怖いのが解離性大動脈瘤です。

心臓から血液を送り出す太い血管を大動脈と呼びます。

大動脈は胸からお腹を通って両足に枝分かれしていきます。

心臓から駆出される血液による圧によって、大動脈には常に負担がかかっています。

特に血圧が高かったり動脈硬化があると、動脈にかかる負担は増します。

その結果、動脈が傷んでしまい、最終的には動脈が割けて瘤(こぶ)のように膨らんでしまいます。

このような状態を解離性大動脈瘤と呼びます。

大動脈瘤が破裂する前は無症状です。症状が出るのは破裂した際です。その際は激痛を訴えると同時に、大量出血を起こすため血圧が一気に下がり意識を失ってしまうことが多いです。

すぐに適切な治療を行わないと命を落とす危険性があります。

心臓外科血管外科で診断、治療を行います。

尿管結石

命には関わることはありませんが、頻繁に見かけるのが尿管結石による腰痛です。

尿管とは腎臓で作られた尿を膀胱に送るための管です。

尿に含まれるカルシウムなどの結晶が集まって石になります。その石が尿管に詰まると腰に痛みを訴えます。

尿管結石が原因の場合、じっと安静にしていても発作的に激痛が出て、しばらくすると消えるといった症状を繰り返します。腰をゲンコツでトントンと叩くと痛みが出るのも特徴です。

尿管結石が疑われる場合は泌尿器科で診断、治療を行います。

十二指腸潰瘍

胃からつながる腸の始まりの部分を十二指腸と呼びます。

胃液に含まれる胃酸の影響で十二指腸の粘膜がただれることで起こります。

原因としては飲酒や喫煙、ストレス、鎮痛剤などの薬による粘膜障害があります。

症状としては空腹時の腹痛が多いですが、腰に痛みが出ることもあります。

空腹時に痛みを感じるけれど、腰を動かしたからといって痛みが出るわけではないなら、十二指腸潰瘍が原因の可能性が高いです。

消化器内科を受診しましょう。

急性膵炎(きゅうせいすいえん)

急性膵炎とは、膵臓が何らかの原因で急に炎症を起こす病気です。 急性膵炎の2大原因は、アルコールと胆石です。炎症が他の臓器にまで広がることも多いです。 

最も多い症状は腹痛ですが、背部や腰部まで痛みが広がることもあります。 いっしょに吐いたり、熱を出したりします。

急性膵炎が疑われる場合は消化器内科を受診しましょう。

腫瘍

腎臓ガンや膵臓ガン、胃腸のガン、肝臓ガンなどが原因で腰痛が出現することがあります。

腰の骨にガンが転移することで腰痛が出現することもあります。

腰の骨や腰を通る脊髄神経に腫瘍ができて痛みが出ることもあります。

腫瘍が原因の腰痛は、激痛を訴えることが多く、安静にしていても痛みが治まりにくいです。血液検査で貧血を認めたり、骨に関連した数値が異常値であったり、腫瘍マーカーが上昇したりします。

レントゲンやCT、MRI、PETなどの画像検査で診断できることが多いです。

まとめ

腰痛は腰以外にも原因があって出現します。

その多くが放置していると重症化したり命に関わるものばかりです。

そのため医療界では見逃してはいけない症状としてレッドフラッグサインと呼びます。

体の動きに関係なく腰痛が出現した際は今回お話した病気が原因の可能性があります。

できるだけ早期に疑われる疾患の専門科を受診するようにしましょう。

専門科が分からない場合は、総合病院の内科や総合内科を受診すれば原因を調べてくれます。