
人工心臓とは
元来、末期の心不全状態に対して心臓移植が唯一の治療法でした。
しかしドナー(臓器提供者)は常に不足しており、心臓移植を待ちながらお亡くなりになる方が、アメリカだけでも日に17人いると言われています。
人工心臓が実用化することで、ドナーが現れなくても生き長らえることが可能となります。
今までにも人工心臓はありましたが、心臓移植までの待機期間をしのぐための一時的なもので、実用的ではありませんでした。
人工心臓Aeson
今回実用化されたフランスCARMAT社が開発した人工心臓デバイス「Aeson」は、約5年間は元々の心臓と完全に置き換えられるよう設計されています。
材料はウシの組織を含む生体適合性の高い素材で作られているため、拒絶反応も起こりにくくなっています。
本物の心臓と同じように、2つの心室と4つの生体弁を持ち、大動脈または肺動脈に血液を送り込む小さな電気モーターで作動します。
さらに、センサーによって血流の範囲を自己調整するように設計されています。
ただ重さは900グラムと典型的な心臓のほぼ倍の重さがあり、電力は外部機器から供給されるため約4㎏のデバイスを持ち歩き、バッテリーは4時間ごとに充電しなければなりません。
Aesonは2013年から臨床試験を開始ししました。2020年12月にはCEマークを取得し、ヨーロッパでは治療として使用できるようになりました。
CEマークとは、製品がEU (欧州連合) 加盟国の法律に適合した証としてつけられる基準適合マークです。
EUは、技術的な貿易障壁を撤廃するため、製品の安全性と品質についてEU加盟国で異なっていた規格を統一し、安全性が保証された製品の円滑な流通を目指す「技術的調和と標準に関するニューアプローチ議決」が採択(1985年)。この議決を受けて、EU市場で統一する安全要求基準を規定したEU指令を定め、加盟国はこれに合わせて安全法規を整備し共通の安全基準が規定されました。
この製品の安全・品質など規制統一に関する指令を「ニューアプローチ欧州指令」と呼び、この指令の要求事項を満たした印として製品に貼りつけるものとして、CEマークが制定されたのです。
CEマーク加盟国は
EU28か国ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、オーストリア、フィンランド、スウェーデン、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロベニア、スロバキア、エストニア、ラトビア、リトアニア、キプロス、マルタ、ルーマニア、ブルガリア、クロアチア
EFTA(4か国):スイス、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン公国
加盟候補国:トルコ、バルカン半島諸国となっています。
テクノロジー・インターナショナル・ジャパン株式会社H.P.より引用
人工心臓の実用化
ヨーロッパで最初の手術はナポリMonaldi病院で2021年7月19日に行われました。
ヨーロッパに次いでアメリカでも米国食品医薬品局(FDA)がAesonの臨床研究の一環として、2021年7月27日米国で最初の手術がデューク大学病院で行われました。患者はノースカロライナ州シャロットに住む39歳のマシュー・ムーアさんです。ムーアさんは当初、心臓バイパス手術を受ける予定でしたが、病状が悪化するにつれ、医療スタッフの手に負えなくなり、通常の心臓移植でもリスクが高い状態になってしまい、人工心臓移植を行うことになりました。術後の経過は良好とのことです。
今後、人工心臓移植が一般化すれば、多くの命が救われることになることでしょう!
人工心臓がついに実用化されました!