はじめに
新型コロナウイルスに対するワクチンとして最初に採用されたのは、ファイザー社とモデルナ社のワクチンはmRNAワクチンでした。
mRNAワクチンは今まで使用されたことがないタイプのワクチンで、未知な部分が非常に多く、安全性も確立されていませんでした。
そもそもmRNAワクチンは、厳密にいえばワクチンではありません。
ワクチンとは毒性を抑えたウイルスを体内に注入することで免疫細胞に働きかけ、抗体を産生するものです。
しかしmRNAワクチンは、人の遺伝子にウイルスの遺伝子を紛れ込ませて抗体を作らせます。ワクチンというよりは遺伝子操作、遺伝子治療に近いイメージです。
mRNAワクチンの技術は元々ガン治療などのために開発されたものです。
実際にファイザー社は、今後mRNAワクチンで培った技術をガン治療に応用していく指針を発表しています。
極端な言い方をすれば、mRNAを用いたガン治療の治験が世界中で行われたわけです。
mRNAワクチンは普通のワクチンではないため、専門家の間で予測されていた通り多くの副作用が出現しました。
高熱や局所の反応だけでもワクチンとしては強すぎますし、あまり報道されていませんが死者が多数出てます。厚生労働省が発表しているだけでも、2022年4月17日時点でファイザー社ワクチンで1549件(100万回接種あたり7.6件)、モデルナ社ワクチンで140件(100万回接種あたり2.4件)となっています。
死因としては虚血性心疾患や心不全、心筋炎、脳卒中など心臓や血管に関連したものが多く見受けられます。
mRNAワクチンは予防手段であるワクチンとしては危険すぎると言わざるを得ません。
ちなみに中国製のワクチンは、昔からある不活化ワクチンであるため、製造過程や有効性がはっきりしないものの安全性が確立されています。中国は2020年11月から21年9月までに約10億回分のワクチンを109の国と地域に輸出しました。出荷先の大部分(約8億回分)はアジアと中南米が占めています。世界的には中国製のワクチンはメジャーとなっています。
このような状況を打破する新しいワクチンが新規に採用される可能性が高まっています。
それは組み換えタンパクワクチン(ノババックス社製ワクチン)です。
ノババックス社が開発したワクチンは、武田薬品工業株式会社が薬事承認申請し、2022年4月19日に薬事承認されています。
今回はノババックスについて分かりやすく解説します。
ノババックスってどんなワクチンなの?
ノババックスは組み換えタンパクワクチンという種類のワクチンです。
B型肝炎ワクチンなど既に使われているワクチンと同じ系統のワクチンであり、未知なものではありません。
ノババックスの作り方は以下の通りです。
- 新型コロナウイルスの表面に存在する感染に関係する特徴的なトゲ(このトゲをスパイクタンパクと呼びます。トゲが並んでいる様子が王冠に見えることから、王冠を意味するコロナという名前がウイルスに付けられました。)の遺伝子を取り出します。
- 次にトゲの遺伝子を昆虫細胞に注入して、昆虫細胞内でトゲ(スパイクタンパク質)を作り出します。
- トゲ(スパイクタンパク質)にアジュバントと呼ばれる免疫反応を促進する物質を加えることでワクチンは完成します。
mRNAワクチンは①のトゲの遺伝子を直接人体に注入し、人の細胞内でトゲを大量に産生させるものでした。その結果、トゲが心臓や血管に損傷を与えるなどして重篤な副作用が発生しました。
ノババックスワクチンは昆虫細胞でトゲを産生させます。そのためトゲの量を調整した薬液を注射することができます。そのためトゲが過剰になることはなく、副作用が起こりにくくなっています。
次に注射された後、体内でどのように作用するのかが起こるのかを見ていきます。
ノババックス注射後の作用
ノババックスが注射されると、抗原提示細胞という免疫細胞がトゲを取り込みます。
抗原提示細胞は警備員のような役割を果たしています。
警備員である抗原提示細胞は、体内に入ってきた不審者(ワクチン内のスパイクタンパク質)を見つけ出し、身分証明書(抗原)を確認します。
次いで身分証明書(抗原)を裁判官(T細胞)に提示します。
裁判官(T細胞)が身分証明書(抗原)を確認し有罪と判決したら、今後体内に不審者の仲間が侵入してきた際すぐに警察官(B細胞)が逮捕に向かい手錠(抗体)で捕まえます。
これがノババックスワクチンの作用です。
ノババックスの有効性
海外試験で17312人に接種した結果、新型コロナウイルス感染症になった人は14人(0.1%)のみで、有効率は90.4%と十分な有効性が確認されています。
世界各国で18歳以上に対し初回シリーズであればノババックスの接種を認める国が増えています。
2022年4月25日時点で
カナダ、フランス、ドイツ、WHO、EU
が承認しています。
現在分かっているノババックスの副作用
ノババックスはmRNAワクチンのように重篤な副作用の心配はないのでしょうか。
結論からお話すると、ワクチンの作用機序から考えて副作用は少ないと考えられます。
臨床試験の結果では重篤な副作用は報告されていません。
ただし注射をした局所の痛みや頭痛、筋肉痛、だるさなどは半数前後に認められ、吐き気や関節痛も1~2割程度ありました。
とはいえこのあたりの症状はどのようなワクチンにも認める反応であり、心配するほどのものではありません。
さいごに
ワクチンは安全性と有効性が確立されていることが必須条件です。
mRNAワクチンに関しては、安全性、有効性ともに疑問視せざるを得ない状況でした。
ノババックスワクチンの安全性、有効性は、今後接種が開始されていかないと分からない部分がありますので、現時点で全面的に推奨はできません。
しかしながら臨床試験の結果と作用機序から考えると、mRNAワクチンよりは優れたワクチンになると思われます。
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