関節リウマチの症状・原因・治療【医師解説】

関節リウマチとは

温泉の効能に『リウマチ』と書かれているので、関節リウマチ関節が痛くなる病気だということはご存じだと思います。

その考えはある程度はあっていますが、正解ではありません。

関節リウマチは確かに関節の痛みが一番現れやすいですが、それ以外にも全身の様々な場所に症状が現れます。

関節リウマチは自己免疫疾患じこめんえきしっかんと呼ばれる病気のグループに属します。

自己免疫疾患とは

免疫細胞が活発になり過ぎて自分の体を攻撃してしまう病気のことをいいます。

関節リウマチの場合、関節を包む関節包かんえつほうの内面に存在する滑膜かつまくという膜を免疫細胞が攻撃してしまいます。

その結果、関節に炎症が起こり、関節の痛みやが出現します。

最終的には関節が破壊されてしまいます。

Image by brgfx on Freepik

また病気が進行すると、関節以外の心臓腎臓皮膚神経などにも変化を起こします。

そのため早期に発見し治療を行わないと、命に関わることもあります

日本の全人口の約0.5%が関節リウマチだとされています。

20歳~50歳代で発病することが多いです。ピークは働き盛りの40~50歳代です。

女性の方が男性の5倍なりやすいです。

関節リウマチの原因

関節リウマチの原因はいまだにはっきりしていません

遺伝感染が関係しているという説があります。

遺伝説

家族が関節リウマチだと、関節リウマチになることが多いので、遺伝性があるとされています。

一卵性双生児の場合、一人が関節リウマチになると、もう一人が関節リウマチになる可能性が30%ほどあります。

このことからも何かしらの遺伝性があると考えられています。

遺伝子の研究が進むことで、関節リウマチに関係する遺伝子が分かってきました。

例えばHLA-DR4という遺伝子が発現すると、関節リウマチになる率が高くなることが分かっています。

感染説

細菌やウイルスによる感染が関係しているとする説もあります。

細菌としてはマイコプラズマやミコバクテリウム、ウイルスとしてはエプスタイン・バーウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、風疹ウイルス、パルポウイルスなどの関係が疑われていますが、はっきりとした証拠はありません。

関節で何が起こっているのか

きっかけは不明ですが、関節の腫れや痛みがどのようにして起こるかは解明されています。

関節を包んでいる関節包の内面には、滑膜かつまくという薄い膜が存在しています。

滑膜からは関節の動きを滑らかにする滑液かつえきという液体が分泌されています。

関節リウマチの人は、滑膜が普通の人に比べて増殖しています。

その影響で関節に滑液が溜まり腫れて痛みが出やすくなります。

関節リウマチの人の滑膜を調べると、免疫細胞の仲間である

  • リンパ球
  • 形質細胞
  • マクロファージ
  • 好中球

が大量に入り込んでいます。

免疫細胞のひとつマクロファージは炎症を引き起こすサイトカインという物質(TNF-αやIL-1)を作り出します。そのため滑膜で炎症が起こります。

その結果、関節が腫れて痛くなります。

さらにサイトカインは、滑膜や炎症に関係する細胞を長生きさせる作用があります。

そのため関節の腫れと痛みがどんどん悪化します。

またマクロファージや好中球から分泌されるセリンプロテアーゼIL-1という物質の刺激によって、滑膜からMNP(マトリックスメタロプロテアーゼ)という物質が分泌されます。

MNPは軟骨を溶かす作用があります。

MNPが増えると関節の軟骨が溶かされていき、やがて関節がボロボロになって変形してしまいます。

関節リウマチの症状

関節リウマチは、最初は手の指や足の指に症状が現れやすいです。

両側に症状が現れるのが一般的です。

手や指の症状

手に指では第2関節や拳の部分に腫れや痛みが出ることが多いです。

London International Patient Servicesより転用
https://lips.org.uk/rheumatoid-arthritis-diagnosis/

第1関節が腫れて痛くなることもありますが、ほとんどは長年使い過ぎて軟骨が擦り減った結果起こるへバーデン結節という他の病気です。

へバーデン結節の場合は関節が硬くカチコチなっているのに対し、関節リウマチの場合は関節が柔らかくグラグラになっています。

また関節リウマチの関節は赤く熱をもってブヨブヨと腫れており、軽く押さえるだけで痛みが出るのも特徴です。

指の症状は朝起きた時に強く、起床後30分間は指がこわばって動かしにくいことが多いです。

関節は気圧の影響を受けやすいため、天気が悪いと症状が強まる人も多いです。

進行すると指先が小指側を向いていったり、指が白鳥の首のような形に変形したりします。

その他の関節

早期に適切な薬による治療を開始しないと、手足のほかに、

  • 股関節
  • 膝関節
  • 足関節
  • 肩関節

などが腫れて痛くなり、やがて関節が破壊され変形し動かせなくなってしまいます。

頚椎けいつい

関節の破壊で特に怖いのが、頚椎けいつい(首の骨)です。

頚椎は7個縦に並んでいます。

頚椎のうち一番上のものを環椎かんつい、二番目を軸椎じくついといいます。

https://www.freepik.com/author/kjpargeter on Freepik

環椎は頭蓋骨を支えています。

軸椎は環椎と連結し首が回るのに重要は働きをしています。

関節リウマチが進行すると、環椎と軸椎の間の関節が破壊され、環椎と軸椎がズレていきます。

このような状態を環軸椎亜脱臼かんじくついあだっきゅうといいます。

環椎と軸椎の後ろ側には、首から下の運動や感覚に関係する神経の束である脊髄せきずい神経が通っています。

もし環椎と軸椎のところで脊髄神経が圧迫を受けると、首から下が麻痺してしまいます。

そればかりではありません。

心臓を動かしたりする自律神経も通っているため、圧迫が強まれば心臓が停止してしまう危険性があります。

環軸椎亜脱臼の程度が強くなった場合は、金属で固定する手術が必要になります。

詳しくは治療のところで後述します。

全身の症状

全身の症状としては、炎症の影響で

  • 微熱
  • 貧血
  • 倦怠感けんたいかん(体のだるさ)

を訴えることが多いです。

心臓などに影響が出始めると、全身の症状はさらに進みます。動くことが辛くなり、息切れしやすくなります。

関節リウマチの治療

関節リウマチはまずは薬で治療を行います。

関節の変形が進行してしまった場合は手術を行います。

としては

  • 消炎鎮痛剤
  • ステロイド剤
  • 抗リウマチ薬(免疫抑制薬、免疫調節剤、分子標的薬)

があります。

手術としては

  • 人工関節置換術
  • 関節固定術
  • 後方固定術

があります。

それぞれについて詳しく解説します。

消炎鎮痛剤

風邪や腰痛、一般的な関節痛でも使用するような消炎鎮痛剤を用いることで、関節リウマチの炎症を抑えることができます。

炎症や痛みを抑えることができますが、長期間使用すると胃潰瘍や十二指腸潰瘍、腎機能障害、肝機能障害などの合併症を起こす危険性があります。

また炎症や痛みを抑えることができても、根本的な免疫の異常に関与することができないため、治療というよりは対症療法になってしまいます。

代表的な薬

アセトアミノフェン、ロキソプロフェンナトリウム、セレコキシブなど

ステロイド剤

一般的にステロイド剤と呼ばれる薬は、正確には副腎皮質コルチコステロイドという薬剤です。

ステロイド剤は免疫細胞の働きを抑制することで炎症を抑える作用があります。

そのため古くから関節リウマチの治療に使われています。

しかしステロイド剤には以下のような様々な副作用があります。

  • 免疫力低下
  • 生活習慣病(糖尿病、高脂血症、高血圧症)
  • 胃潰瘍
  • 骨粗しょう症
  • うつ病
  • 不眠症
  • 顔がパンパンになる

そのため必要最小限の量を使用するようになっています。

代表的な薬

プレドニゾロン、デカドロン

抗リウマチ薬

免疫調整剤

その名の通り免疫細胞の働きを調整することで、関節リウマチの症状を和らげる薬です。

調整するだけなので効果はそれほど強くなく、効果が出るまで数カ月かかります。

そのため最近はほとんど使われなくなっています。

代表的な薬

ハイドロキシクロロキン、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、イグラチモド、チオリンゴ酸ナトリウム、D-ペニシラミン、ロベンザリット、オーラノフェン、アクタリット

免疫抑制剤

免疫細胞の働きを抑える薬です。

臓器移植の後に拒絶反応を起こさないようにするために使われたりもします。

免疫調整剤に比べて効果は強いですが、免疫力がかなり落ちてしまうため感染しやすくなるというデメリットがあります。

そのためメインで使う薬ではありません。

代表的な薬

シクロフォスファミド、タクロリムス、アザチオプリン、ミゾリビン

分子標的薬

分子標的薬とは、バイオテクノロジーによって標的となる特定の分子にのみ効果を発揮するように開発された薬のことです。

そのため副作用が少ないうえに大きな効果が期待できます。

最近の治療ではメインで使われるようになっています。

分子標的薬は

  • 生物学的製剤
  • JAK阻害薬

に分けられます。

生物学的製剤

生物学的製剤とは、バイオテクノロジーを用いて作られた薬のことです。バイオ製剤ともいいます。

タンパク質が主成分のため、飲んでも消化液で溶かされてしまいます。

そのため点滴皮下注射で投与します。

薬が体に合えばとても効果的です。

ステロイド剤や抗リウマチ薬と同様、肺炎などの感染症になりやすいので注意が必要です。

代表的な薬

インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブ・ペゴル、トシリズマブ、アバタセプト

JAK阻害薬

前述した炎症を引き起こすサイトカインによる刺激を細胞に伝える際に必要な酵素JAKを阻害することで、炎症を抑えるタイプの薬です。

最も新しいタイプの薬で、内服薬でありながら生物学的製剤と同等かそれ以上の効果を発揮します。

代表的な薬

トファシチニブ、バリシチニブ、ペフィシチニブ、ウパダシチニブ、フィルゴチニブ

人工関節置換術

関節リウマチに対する薬の開始が遅くなったり、薬の効果が不十分だと、関節が破壊されてしまいます。

その際は関節を金属とポリエチレンに交換する人工関節置換術が行われます。

人工関節置換術は膝や股関節、肘関節、肩関節に対して行われることが多いです。

膝の人工関節置換術 Atlantic Health Systemより転用 
https://ssl.adam.com/content.aspx?productid=117&pid=1&gid=002974&site=atlantichealthssl.adam.com&login=ATLA1992

関節固定術

破壊された軟骨を削って、骨同士を金属でつなげて動かなくする手術です。

関節を曲げ伸ばしできなくなるため、足関節など限られた場所にしか行いません。

(左足首)の手術直後(A、B)、手術後4ヶ月(C、D)、手術後12ヶ月(E、F)の術後X線写真。
Wiley Online Libraryより転用https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ccr3.5348

後方固定術

環軸椎亜脱臼に対して行われる手術です。

環椎と軸椎の位置を亜脱臼していない正常な位置に戻し、金属のスクリュー(ネジ)とロッド(棒)で固定します。

JSM Neurosurgery and Spineより転用
https://www.jscimedcentral.com/Neurosurgery/neurosurgery-2-1008.php

まとめ:早期治療することが重要

以前は関節リウマチに対する良い薬がありませんでした。

そのため全身の関節が変形し、内臓の病気が次々と起こってしまうため、長生きすることができない病気でした。

近年分子標的薬が開発されたことで、関節リウマチの症状を正常に近い状態にすることができるようになっています。

分子標的薬は新薬が次々と開発されており、治療の選択肢が増えています。

とはいえ進行してからでは薬の効果が得られません。

そのため早期発見し早期に治療を開始することが重要です。

「関節リウマチかも」と思ったら、膠原病内科、リウマチ科、整形外科を受診しましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA