はじめに
風邪とはウイルスが感染することで様々な症状が出現する感染症です。
インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスは、症状と感染力が強いため特別扱いされていますが、風邪と同じウイルス感染症です。
ここでは便宜上、インフルエンザ、や新型コロナも風邪として扱わせていただきます。
風邪になると様々な症状が現れます。
あなたは風邪によって現れる諸症状を、不快で悪いものだと感じているのではないでしょうか。
しかし風邪のときに現れる諸症状は、実はあなたの体を守るためのものなんです。
この記事を読めば、風邪やインフルエンザ、新型コロナなどのウイルス感染症で出現する諸症状が実はあなたの体を守っていることを知ることができ、諸症状を不快に感じなくなります。
それぞれの症状について解説していきます。
鼻水
風邪のウイルスは主に鼻やノドの粘膜から侵入します。
そこで体は鼻の粘膜から侵入しようとするウイルスを洗い流すために鼻水を出してくれます。
またウイルスは乾燥状態で繁殖しやすいため、鼻水を出すことで乾燥を防いでいます。
鼻水はノドにも流れていきます。
鼻と同時にノドのウイルスを胃に流しています。胃では胃酸という強力な酸が分泌されているため、風邪のウイルスは溶かされてしまいます。
痰(たん)
風邪のウイルスが原因で出る痰は白っぽいのが特徴です。
白い痰の正体は、ノドと肺をつなぐ通路である気管にウイルスが侵入したことで増えた分泌物です。
気管の分泌物も鼻水同様、乾燥を防ぎつつウイルスを体外に排出するために増えていると考えられます。
痰が黄色や緑色になった場合は、細菌感染が起こっている可能性が高いです。
色がついた痰は、細菌を攻撃した免疫細胞の死骸が塊になったものです。
ここでウイルスと細菌の違いについて簡単に触れておきます。
ウイルスと細菌は同じ微生物に分類されますが全く別物です。
微生物とは肉眼では確認できない微小な生物の総称です。
細菌は、人間をはじめとした多くの生物同様に細胞をもちます。(ただし人間の細胞数が37兆個と言われるのに対し、細菌はたった1つの細胞しかもたない単細胞生物です。)細胞をもつので分裂し増殖することが可能です。
しかしウイルスは細胞をもちません。そのため自分自身で増えることができません。そこで感染した個体の細胞内で自分のコピーを作らせて増殖します。そのため生物ですらないという考えがあります。
余談ですが、風邪に抗生物質は効きません。抗生物質は細菌の増殖を防ぐための薬であって、ウイルスには効果がありません。
しかしウイルス感染である風邪に対して抗生物質を処方する医者が非常に多いです。
なぜかというと、風邪に引き続き細菌感染を起こすと肺炎になる可能性があるため、予防的に抗生物質を処方するためです。
しかし人並みの免疫力があれば肺炎になることは滅多にありません。
不必要な抗生物質の使用は、抗生物質に抵抗力をもった強い細菌を生み出す原因になります。
とはいえ免疫力が落ちている場合は風邪が引き金となって肺炎を起こす可能性が高いので、抗生物質を予防的に投与する必要があります。
咳(せき)
咳はノドやノドから肺へつながる通路である気管にへばりついている痰(たん)を体の外に出すために出現します。
痰と一緒にウイルスも体外に排出されます。
- ただし以下のような理由で咳が出ている場合があります。
- ウイルスや咳のし過ぎでによって気管が傷つけられて咳が続いている
- アレルギーによって気管が狭くなり咳が出ている(咳喘息)
- 肺炎や肺ガンの症状として咳が出ている
- 胃酸の逆流によってノドが刺激され咳が出ている
もししつこい咳が続く場合は精密検査を受けるようにしてください。
僕自身、風邪で始まった咳がなかなか治らないため呼吸器内科を受診した結果、はじめは咳喘息、その後肺炎と診断されましたが、最終的には悪性腫瘍が原因でした。
くしゃみ
くしゃみは鼻に入った異物を鼻の中の知覚神経が感知して出るものと考えられています。
つまりくしゃみもウイルスの侵入に対する対抗手段として出現しています。
くしゃみには他にも、体温を上げることで免疫力を活性化させたり、体の余計な緊張を和らげて歪みを矯正して生命活動を活発にさせたりする効果があると考えられています。
熱
ウイルスが体内で増殖すると、ウイルスをやっつけるために免疫系が活性化されます。免疫系が活性化されると体温が上がります。
体温を上げることで免疫系はさらに活性化されますし、ウイルスが死滅しやすくなります。(ウイルスは高温が苦手なためです。)
熱が出ている時は、「今、免疫系が活性化されているんだな。同時にウイルスがどんどん減っているんだな」と思ってください。
熱が出ると解熱剤を使うのはおすすめしません。
なぜならば免疫系の活性化を抑えるばかりか、ウイルスが増殖しやすい状態を作ってしまうからです。
高熱でつらいときは、氷枕で後頭部を冷やし、保冷剤などを脇の下、鼠径部に置いて体温をやんわり下げるようにしましょう。
逆に寒気を感じるときは、厚着をして布団をかぶって温かいものを飲食して体を温めるようにしてください。
葛根湯は風邪薬だと思っている人が多いですが、葛根湯には体温を上げて筋肉の緊張を和らげる作用しかありません。東洋医学が凄いと思うのはこのあたりです。風邪には体温を上げることが重要であることを先人は数千年前に気付いていたのです。
西洋医学は風邪の熱を薬で下げる対症療法を行うのとは対照的です。熱を下げることで症状は楽になるますが、治りは遅くなります。そればかりか体温調節がおかしくなり脳に障害が出ることもあります。インフルエンザの治療薬タミフルで問題となった異常行動や、子供のインフルエンザで頻発したインフルエンザ脳症は、無理やり解熱したことが一因であると考えられています。
倦怠感
倦怠感(体のだるさ)は風邪の初期から現れます。
倦怠感が出るのは、体があなたに無理をさせず、安静を保たせようとしているためです。
体からのメッセージを受け止め、その意味を理解し、従うことが大切です。
体からのメッセージを無視して無理を続けると、容態は悪化します。
治りが遅くなるばかりか、さらに大きな病気を起こす可能性があります。
さいごに
風邪の諸症状が実はあなたを守るためのものであることが理解できたと思います。
風邪薬を使うことで、元々もっている自然治癒力を妨げてしまいます。
どうしても無理をしなければならなかったり、症状を抑えなければならない場合は、風邪薬を使うのも仕方ないと思います。
過剰に使用することによる弊害を理解しながら使用しましょう。
コメントを残す