脊椎分離症【専門医解説】

はじめに

思春期に過激なスポーツを行うことで出現する腰痛のなかで、重症なものに脊椎分離症があります。

脊椎分離症になると、治療に長期間を要し、競技から離脱せざるを得なくなります。

早期に発見し治療を行うことが重要です。

今回は脊椎分離症について分かりやすく解説します。

この記事を読めば脊椎分離症に早く気付き、治療期間を短縮できるようになります。

どんな病気?

脊椎分離症とは、腰の骨同士を連結する椎間関節に疲労骨折を起こしたものです。

左斜め後方から見た腰

思春期に起こることがほとんどです。。

主な原因は運動部やスポーツクラブでの過激なトレーニングです。

繰り返し腰に負担がかかることで、骨に疲労が蓄積し、最終的に骨折を起こしてしまいます。

運動中腰に「ゴキッ」と瞬間的に激痛が出て発症することが多いです。

運動中以外は腰痛を感じないことがほとんどです。

原因

腰を伸ばす(反らす)運動回旋させる(ひねる)運動が脊椎分離症の原因となりやすいです。

軽い運動であれば問題ありませんが、運動の回数が多かったり強度が強かったりすると、骨に負担がかかって脊椎分離症を引き起こしてしまいます。

思春期は骨の成長が不十分にも関わらず、筋肉がグングン成長します。

筋肉の成長に骨が追いつかない状態になります。

そのような状態で過激な運動を行うと、骨に過剰な負担がかかり、骨折を起こしてしまいます。

診断

次の4つがそろっていれば脊椎分離症を疑います。

  1. 運動中、腰に激痛が瞬間的に出る
  2. 12~17歳である
  3. 過度なスポーツや運動をしている
  4. 腰を伸ばす(反らす)と腰痛が出る

その他、腰の真ん中な骨(棘突起)を押すと痛い、あおむけで寝た状態で足を上げていくと痛みが出るなども症状としてあります。

症状が当てはまり、1週間以上続く場合は、医療機関を受診してください。

レントゲン、CT、MRI撮影にて確定診断を行い、治療を開始する必要があります。

治療

治療の基本は安静となります。

特に発症後1カ月間は厳重に安静することが重要となります。

腰をギプス固定したり、装具で固定したりします。

11歳以下の場合は、治りが悪いので厳重な安静が必要です。

固定期間はギプスは0~2か月、その後装具を1~3カ月が目安となります。

固定開始から1カ月で体幹の筋力トレーニングを開始します。ただし腰を動かさず収縮だけさせる運動のみとします。(クランプなど)

安静治療によって、分離が片側だけの場合は99%、両側の場合は85%が治ります。

さいごに

安静にするために競技を離れ宇ことは、思春期にスポーツをしている人にとっては苦痛です。競技から離れることで他の選手に置いて行かれる不安などから、強い焦りを感じます。

安静にすることが結果的に競技復帰を早め、後遺症を残さないことに繋がることを理解してもらうことが重要です。

また仮に分離症が残ったとしても、必ずしも腰痛が残り競技に支障をきたすわけではないことを事前に説明しておくことも大切です。画像上分離が残っていても、線維組織によって分離部が繋がり支障をきたさないことが多いからです。