軟骨を作るプロテオグリカン

はじめに

関節を構成する軟骨が減ると、関節が動かしにくくなったり痛みが出たりしやすくなります。

このような状態を変形性関節症といいます。

特に体重がかかりやすい膝関節では、軟骨が擦り減りやすいです。

膝の変形性関節症のことを変形性関節症といいます。

厚生労働省の調査によると変形性膝関節症の人は、自覚症状がある人で約1000万人、自覚症状はないけれどレントゲンで診断できる人で約3000万人もいると推定されています。

赤ちゃんや子供を含めた全国民の4人に1人が変形性膝関節症だということになります。

ご高齢者だけに限れば、2人に1人程度は変形性膝関節症だと考えられます。

変形性膝関節症は進行すると歩行困難となり、寝たきりの原因にもなりかねません。

軟骨を少しでも長持ちさせることが重要となってきます。

現在軟骨が減るのを予防するために様々な成分の健康食品が販売されています。

整形外科外来をしていると、非常に多くの患者さんが摂取していることに気付きます。

健康食品に含まれている有効成分として、ヒアルロン酸コンドロイチンなどが多いです。最近ではプロテオグリカンも注目されています。

健康食品に含まれているこれらの有効成分は、軟骨を構成する成分です。

そこで今回は軟骨を構成する成分について解説します。

今回の記事を読めば、関節用の健康食品に含まれる有効成分について理解できるようになります。

軟骨とは

まずは軟骨について説明します。

軟骨そのものは、鶏の手羽に付いていたり、焼き鳥屋や居酒屋の鶏なんこつなどで目にしたことがあると思います。

鳥軟骨を食べたことがある人は分かると思いますが、骨よりも柔らかく弾力があります。

軟骨は関節のほか、鼻、耳などに存在しています。

働きとしては関節の運動をスムーズにしたり、鼻や耳を形作ったりしています。

胎児のときは骨の元ととして存在し、骨格形成に重要な役割を果たしています。

全身に神経や血管が張り巡らされていますが、軟骨には神経や血管が存在しません。

そのため軟骨は損傷しやすく、損傷しても治りにくいという特性があります。

軟骨の構造

軟骨の組成は、水分が約80%、コラーゲンが12%、プロテオグリカンとヒアルロン酸が2%、その他が約6%です。

軟骨は軟骨細胞と、軟骨細胞の間に存在する分子群によって構成されています。

軟骨はとても強力な保水作用と弾力性があります。この特性は細胞間の分子群によってもたらされています。

分子群は、コラーゲンから成る線維成分とその間隙を埋めるヒアルロン酸、アグリカン等のプロテオグリカン群およびその他の糖タンパク質から構成されています。

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コラーゲンが軟骨の基本構造物として剛性を担う一方、他の分子群は線維間に沈着して軟骨に独特の保水性と弾力性を与えています。

プロテオグリカン群であるアグリカンヒアルロン酸は、リンクタンパク質という物質とともにプロテオグリカン会合体という一定の構造を形成して組織に沈着しています。

アグリカンは大量のコンドロイチン硫酸を含んでいます。

変形性関節症等の軟骨破壊性疾患においてはアグリカンの分解が主要原因だと考えられています。

軟骨組織再生・組織工学分野ではアグリカンやヒアルロン酸と類似の物理的特性を持つ素材の開発や、アグリカンを発現させる研究が行われています。

アグリカンの分解を抑制する薬剤の研究や、軟骨の再生医療・組織工学が進歩すれば、軟骨の破壊を遅らせることができるようになると思います。

現在販売されている健康食品は、軟骨成分を補うという目的で作られています。

残念ながら軟骨成分を補うだけでは軟骨を再生することは難しいです。

しなしながら栄養成分を補給することで健康効果を発揮することは期待できます。

最近では軟骨成分のみならず、乳酸菌や酵素も一緒に摂取できるタイプのものもあります。

まとめ

軟骨は細胞以外のコラーゲン、プロテオグリカンなどの分子群によって構成されています。

プロテオグリカン群であるアグリカンは、変形性関節症に影響していると考えられています。

現在分子群にアプローチする研究が行われています。