メニエール病【医師解説】

はじめに

メニエール病眩暈(めまい)の原因として多い病気です。

フランス人医師メニエールが報告したことから、メニエール病と名付けられました。

メニエール病による眩暈は日常生活に支障をきたすほど強く、多くの人が苦しんでいます。

メニエール病は40代から60代の女性に多くみられ、責任感が強く几帳面な人に多く出現しやすいと言われています。

今回は多くの人が悩まされている眩暈の原因のひとつであるメニエール病について解説します。

この記事を読めば、眩暈の原因がメニエール病であるか自己診断でき、予防法について知ることができます。

メニエール病の症状

メニエール病は、眩暈に加えて難聴・耳鳴り・耳閉感(耳が詰まった感じ)を伴います。

眩暈は回転性眩暈の発作が繰り返します。

眩暈は真性眩暈仮性眩暈に分類されます。真性眩暈はさらに回転性眩暈浮動性眩暈に分かれます。回転性眩暈とは自分または周囲が回ったり上下左右に移動する感覚です。浮動性眩暈とは船に乗ったような地面の浮動する感覚です。仮性眩暈立ちくらみ、転倒感、脱力感、眼前暗黒感などが含まれます。

眩暈は何のきっかけもなく突然生じます。ひどい場合は吐き気や嘔吐も伴います。

通常は片方の耳に圧迫される感覚と難聴耳鳴りが一緒に出現します。

耳鳴り

難聴は低音から聞きづらくなり、初期には聴力の低下に気づかないこともあります。

症状は通常1~6時間ほど続きます。まれに24時間ほども続くことがあります。

 耳鳴りはずっと聞こえる場合と途切れ途切れに聞こえる場合があります。

発作が起こる前に耳の閉塞感や圧迫感が生じることが多いです。

人によっては、数カ月または数年先行して難聴と耳鳴りが起こってることがあります。このような場合、眩暈が起こり始めると聴力が改善します。

原因

メニエール病は、内耳に存在している内リンパ液という液体の量が過剰になることで起こると考えられています。

内耳には、体のバランスをとる三半規管や耳石器、音を感じ取る蝸牛などが存在しています。

内リンパ液は内リンパ嚢という袋に入っており、通常一定量に保たれています。

内耳の液体の分泌量が増えるか再吸収量が減ると、液体の量が過剰になってしまいます。その結果、メニエール病が発病します。

なぜ分泌量や再吸収量が変化するのかは分かっていません。

NHK健康チャンネルより転用https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_633.html

診断

回転性眩暈片耳の耳鳴り難聴があればメニエール病が疑われます。

眩暈の原因として最も多い 良性発作性頭位眩暈症の場合と異なり、回転性めまいが姿勢の変化によって誘発されることはありません。

診断のために

  • 聴覚検査
  • ガドリニウム造影剤を用いたMRI(磁気共鳴画像)

といった検査を行います。

予防

塩分、アルコール、カフェインを控えることで、症状が出にくくなります。

加えて利尿薬(ヒドロクロロチアジドやアセタゾラミドなど、尿の排泄量を増やす薬)の服用によって、大半の患者で眩暈発作の頻度を減らすことができます

しょっぱい食べ物やお酒、コーヒー、エナジードリンクなどは控えるようにしましょう。

治療

治療は眩暈や吐き気を抑える対症療法が基本となります。

薬による治療

急に眩暈の発作が起きた時は

  • 眩暈を和らげるためにメクリジンロラゼパムなどの薬を使用します。
  • 吐き気を抑えるためにプロクロルペラジンなどの薬を使用します。

症状を軽減するためにステロイド剤の内服や注射を行うこともありますが、副作用が強い薬なのであまり頻繁には使われません。

手術による治療

薬だけでは効果がなく日常生活に支障をきたす場合には、手術を行います。

手術の目的は、内耳の液体の圧力を下げるか、内耳の平衡感覚機能をつかさどる構造を破壊するかのどちらかです。

体への負担が最も少ないのは、内リンパ嚢開放術です。内リンパ嚢にビニール素材の薄いシートを入れ内耳の圧を下げます。平衡感覚や聴力を損なうことが少ない治療となっております。

内リンパ嚢開放術で効果がない場合は、ゲンタマイシン溶液を鼓膜から注射して、内耳の構造を破壊します。

ゲンタマイシンは聴覚にとって有害な抗生物質です。しかし聴力を低下させるより先に平衡機能を選択的に破壊するので、上手に使えば眩暈だけを軽減できる可能性があります。

それでも改善しない場合は、平衡感覚に関係する前庭神経を切断してしまう前庭神経切断術が行われます。

この手術を行うと、内耳の平衡機能が永久的に破壊されてしまいます。しかし聴力は障害されず約95%の患者で眩暈の軽減に成功します。

最終手段とし、迷路摘出術が行われます。これは三半規管を取り除いてしまう手術です。

前庭神経切断術や迷路摘出術は、本来必要な器官を取り除く手術になるので、最終手段となります。

予防と薬で眩暈をコントロールして手術を行わずに済むのが理想です。

とはいえ予防や薬ではよくならず日常生活に支障が出る場合は、耳鼻咽喉科を受診し相談しましょう。

まとめ

  • メニエール病による回転性眩暈は日常生活に支障が出るほど強いものです。
  • 予防のためには塩分、アルコール、カフェインを控えましょう。
  • 基本的な治療は内服薬による対症療法となります。
  • 改善しない場合は手術を行います。

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