腰痛と仕事の関係【専門医解説】

・腰痛の原因が仕事の気がする

・仕事が原因で腰痛になっていることを理解してもらいたい!

と悩んでいませんか?

あなたの思っている通り、仕事と腰痛には関係性があります。

さまざまな研究で、仕事と腰痛には関係性があることが明らかにされています。

僕自身も仕事中に手術や処置で無理な体勢をとることが腰痛になった一因でした

今回は腰痛と職業の関係について解説します。

この記事を読めば、医学的に証明された仕事と腰痛の関係性について知ることができます

結論からお伝えすると

身体的負荷の大きい重労働は,腰痛発症の危険因子であると考えられる

腰痛と職業に関するエビデンスは中等度

仕事や職場における心理社会的因子は腰痛発症や予後に関連する

となっています。

詳しく解説していきます。

腰痛と職種の関係

仕事での腰への負荷が、腰痛に関連しているとする研究結果が多く報告されています。

腰痛と職業の関係を調べた日本国内の調査では、職種ごとの腰痛は以下の通りでした。

  • 運輸 71~74%
  • 清掃 69%
  • 看護 46~65%
  • 介護 63%

身体に負担の大きい重労働が腰痛に関係があります。

文献

・帖佐悦男ほか.職業性腰痛の疫学.日本腰痛学会雑誌 2001; 7: 100.
・吉川 徹ほか.清掃労働者における腰痛の訴えと腰痛に関連した欠勤状況.労働科学 2008; 84: 33.
・Kaneda K, et al. 建設現場労働者の職業性腰痛に関する疫学研究.J Nippon Med Sch 2001; 68: 310

他にも腰痛と職業、身体活動に関する様々な研究結果をまとめた報告では、重量物を持つ労働リフト作業(物や人を持ち上げたり降ろしたりする作業)に腰痛との関係性が確認できました。

なかでも腰を前屈したりひねったりするような動きで腰痛になりやすいことが分かりました。

文献

Heneweer H, et al. Physical activity and low back pain: a systematic review of recent literature. Eur Spine J 2011; 20: 826.

腰痛と職業に関する様々な研究を解析した結果では、農業関係者看護師が患者を持ち上げる動作も腰痛との関連を認めました。

文献

・Driscoll T, et al. The global burden of occupationally related low back pain: estimates from the Global Burden of Disease 2010 study. Ann Rheum Dis 2014; 73: 975.
・Yassi A, et al. Work-relatedness of low back pain in nursing personnel: a systematic review. Int J Occup Environ Health 2013; 19: 223.

重量物を持ち上げる作業と腰痛の関係

重量物を持ち上げる作業と腰痛に関しては 8 つの研究を解析した結果、重量物の重さが増したり持ち上げの頻度が増えれば腰痛発症を増加させることが明らかになりました。

文献

Coenen P, et al. The effect of lifting during work on low back pain: a health impact assessment based on a meta-analysis. Occup Environ Med 2014; 71: 871.

職業による身体活動は腰痛の原因となる可能性がありますが、職場以外での活動が影響している可能性もあるため、厳密なエビデンス(証拠)を示すことが難しいです。

腰痛と職業に関しては、中等度のエビデンスを認めるとされています。

職場での腰痛と心理面の関係

仕事と腰痛の関係には、身体的な負担のみならず心理的な負担も影響します。

職場での腰痛に影響する心理的な要因

  • 仕事に対する満足度
  • 仕事の単調さ
  • 職場の人間関係
  • 仕事量の多さ
  • 精神的ストレス
  • 仕事に対する能力の自己評価

は将来の腰痛発症と強い関連があることが分かっています。

文献

Linton SJ. Occupational psychological factors increase the risk for back pain: a systematic review. J Occup Rehabil 2001; 11: 53.

職場での腰痛が治りにくい心理的な要因

  • 仕事に対する低い満足度
  • うつ状態
  • 低い社交性
  • 恐怖回避信念(理由もなくだんだん悪くなると信じ込むような破滅的解釈など)

があげられています。

文献

Kent PM, et al. Can we predict poor recovery from recent-onset nonspecific low back pain? A systematic review. Man Ther 2008; 13: 12.

ただし患者の全身的な健康や社会的支援、仕事の状態に関する情報が不足していることが多いため,今後さらに正確な研究が必要と考えられています。

僕が診察してきた経験でも、心理的な要因が大きい印象があります。

腰に負担がかかっている大工さんや建築関係の人は、性格が前向きで明るい人が多く、腰痛をこじらせにくいです。

事務職で腰への物理的負担が少ない人でも、ストレスを抱えている人は腰痛をこじらせることが多いです。

心理面と腰痛の関係性は医学的にも証明されつつあります。

身体面のみならず心理面にもケアする必要があります。

まとめ

腰痛は慢性化すると、治すことが難しくなります。

職場での腰痛が原因であれば、環境整備や配置換え、休職、転職なども検討しましょう。

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