余命宣告の影響
僕は余命宣告を受け一度は死を受け入れたものの、妻や子供の涙を見て再び生きようと決断しました。
その際、医師から発せられた余命宣告が脳裏から離れず、「やはり生きることは無理なのではないか」という思いを払拭することがなかなかできませんでした。
医師が発する言葉にはとても強い力があることを、患者になったことで知りました。
告知がされるようになったのはごく最近
最近は病名や余命を告知するのが常識となっています。しかし20年ほど前までは、患者に不安を与えないようにとの配慮で、悪性の病気の場合は病名を告知しないのが常識でした。
例えば胃ガンであれば胃潰瘍と説明し治療が行われていました。
嘘の告知をしてどんなに上手に隠しているつもりでも、患者には家族や医師の迷いや葛藤は伝わってしまうものです。
正しい病名を伝えられず、不安を抱えたまま闘病することは、治癒力を弱め、本当の病名を隠されていたことを知ってしまったときは絶望し病状は悪化します。
インフォームド・コンセントの現状
患者には自分の病状を知り、治療法を選択する権利があるとのことで、近年インフォームド・コンセント(説明と同意)という考えが欧米から日本に輸入されてきました。
インフォームド・コンセントとは、医師が患者さんに対し病状、検査、治療について偽りなく分かるように説明をしたうでで同意をいただくことです。
現在ではほとんどのケースでインフォームド・コンセントの名のもとに、機械的に告知がされるようになっています。
しかし今の告知するスタイルは、訴訟になった際不利にならないようにする目的で行われている傾向があり、相手の心情を思いやっていないと感じます。
以前のように偽りの説明をするやり方が正しいとは言い難いですが、今の機械的なインフォームド・コンセントに比べれば医者が患者さんを思いやる気持ちが強かったように思います。
患者さんの心情をないがしろにして医師の都合で告知を行うことは、患者さんを不安のどん底に突き落とし、希望を奪い、自己治癒力が働くのをさまたげてしまいます。
医師にとって告知は日常的な業務となっていて、機械的な説明となってしまっているケースが多いです。
しかし患者さんにとっては、一生に一度あるかないかの一大事です。患者さんに絶望を与えないよう細心の注意をはらって告知はなされるべきです。
インフォームド・コンセントで注意すべきこと
告知をする際の部屋の環境(明るさ、室温、音など)、座る位置、話し方、目線、態度等、細心の注意を払って行うべきです。
末期ガン患者の精神面を研究した結果によると、絶望を味わったガン患者さんのうち、実に95%以上で病気の進行を認めたと報告されています。
精神面への影響を最小限に減らす工夫を最大限にしながら、インフォームド・コンセントは行われるべきです。
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